ひっつきむし(独断と偏見による)

だいたいゲームの感想です

「テイルズオブアライズ」の感想

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テイルズオブアライズをプレイしました。ごはんを楽しむシオンさん大好きクラブ。据え置きテイルズ5年ぶりの新作なんですね。ベルセリアもけっこう昔のゲームだな。

個人的にはテイルズは半分もやってないかなというくらいの付き合いでもあり、とはいえ好きなタイトルには思い入れが強かったりな感じなのですが(特にイノセンスは初めて自分で買ったRPGだったりしました)、今回かなり楽しみにしていました。世間が盛り上がってるのを見ると、なんだかテンション上がっちゃいますよね。

 

ストーリー的にもシステム的にも、歴代作品のいいところやコアの部分を抽出して進化させた、外さない王道でいかにも「テイルズ最新作」なゲームだったかなと思います。ほんと二つの世界好きね(オタクも好きなのでHAPPY)。

戦闘に関しては下手くそなのであまり言えることがないのですが、ステップなどを廃止してグレイセス以前にベースを回帰させたような部分もありつつ、最近の作品のものや新規なシステムを取り入れていて、そういう意味でも面白かったです。ちょっと私には難しめでしたが、そのぶんやりごたえも十分でした。ガナベルトはきらい。

ブーストストライクのテンポ感のよさ、かっこよさは今作でも特によかった部分のひとつなので、もっと強敵相手にもバンバン使えたり、トドメの演出要素ならそれはそれで全ボスにしっかり用意してあったりしたらもっとよかったなあ。ブーストのギミック自体ももっと活かせていると感じられる要請頻度やダメージになっていれば嬉しかったです。

 

あとシステム的にはファストトラベルが序盤からほぼどこにでもサクサク使えるのが楽でしたし、釣りがけっこう遊びがいのある作りだったり、野営もスキット大盛りでこまめにやっておく楽しみがあったのがよかったですね。

野営は回復的にもできるタイミングでやらないとキツいので、うまいことちゃんとやらせる作りになっていた感じ。キャラ別のイベントが見たすぎて逆にやらなくていいくらい野営してしまいましたが。

フィールド上でのショートチャットや戦闘後掛け合いも豊富で、汎用のものも解禁のタイミングがストーリーに沿って細かく設定されているので、終盤〜クリア後まで遊んでも見たことのないものが出てきて楽しかったです。メンバーが仲良くなっていくのも肌で感じられましたし。ほんとあれらも見返せるようにしてほしい。みんなたちがかわいいので。カラグリやっほーい好き(パスカルさん推し)。

 

ストーリーは上述したようにいかにもテイルズ的な要素を大いに含み、かつ王道な仕上がりになっていて、展開的にはベタとは言えますが、やっぱり王道はよいものだから王道なんですよね。物足りない部分がないとは言えないですが、終えてみて満足できるお話でした。

ただひねりなんていらんと言うよりは、前作が邪道・アンチ王道の良作だったのもあり、最近の作品ではビターな結末が続いていたのもあり、余計にそういう気持ちになるところでした。

かつ主人公らの主張やメッセージには今らしさやシリーズの積み上げてきたものを感じさせる部分もあって、よい「テイルズ最新作」だったなと思います。特にラストバトルあたりのシオンと世界に関してのアルフェンの考え方は今だから言える感じがあって好きでした。

 

近年のテイルズには珍しく恋愛激推しでしたが、個人的には全員カップリング化OK派ですし(連載漫画などだとまた別ですが)、嬉しかったです萌えましたとしか言えない。この辺は好みですよね。男同士、女同士の関係性もしっかりできていましたし。

カップリング(×カップル)ごとに雰囲気や味の濃さをしっかり変えているのはとてもよかったです。同じようなラブラブカップルばっかでも困るみたいなところはあるので。

 

以下ネタバレありパーティキャラ語り。

 

 

アルフェン

ど真ん中な感じの主人公。優しくまっすぐで、熱血でちょっと頑固で、みんなのまとめ役で、でも少し脆かったり短気なところもあったりして、いかにも主人公らしいキャラクターでした。

最初は記憶喪失ゆえか無知・無邪気系っぽい感じもありましたが、特にジルファの死をきっかけにしてどんどん大人に、リーダーらしくなっていきましたね。みんなを引っ張るだけでなく下から支えることもできるのがグッド。

 

ジルファとの交流は短くはありましたが、アルフェンが彼から大いに学び受け継いだこと、短い、全て教わったとは言えない付き合いだったからこそアルフェンの中に残り続けているものがあり、それについてアルフェンが考え続けていたことが感じられてよかったです。

ロウとは男の子っぽい明るいノリの関係でもありつつ、ジルファを介するつながりの真面目でしんみりした部分もあって、どのやりとりも好きでした。アルフェンにとってジルファは教師や父のような人で、そういう意味でもロウとは兄弟分な感じですよね。ロウの相談に深刻なことから恋バナまで乗ってあげるのがお兄ちゃんっぽくて好き。

 

そしてアルフェンと言えばもちろんシオンですよね。アルシオ、好きですね。かわいいですね。終盤までくるともうアルシオが無事結婚して終わってくれないと許せないよ〜!! にはなっていたのですが、本気で結婚して終わるとまでは思わなかったのでめちゃくちゃ嬉しかったです。やった〜。

アルフェンからはほぼ一目惚れスタートなのですが、その見とれちゃったシーンについて後から見とれたと言い切っていたのはいかにもアルフェンで面白かったです。ああいうシーンに説明つけちゃうのは野暮と言えば野暮なんですけどアルフェンだからな。

あと最初の頃に青を褒めてもらえたのを最後まで引きずっているのが好きでした。襟巻きの件だけでもなのに勝手に着せられた服の差し色にまで喜ばれちゃそりゃ好きになるんですよね、シオンさんも。シオンのことをいつもまっすぐに好きなのがとてもよかったです。

 

かっこよかったのがやっぱり最後まで絶対に諦めないところで、いよいよもう絶望だと思われた最後の場面でも足掻いてみせたのが感動でした。諦めない心が奇跡を起こす、そういうのでいいんだよ。元気玉展開の布石もちゃんと置いてありましたし。

シオンのことを愛しているけれども、それとは別にというか、それとは別にが一周回って世界も救うしシオンも救う、それは同じことだという結論に至っていたのが好きでした。

遊んでいて世界と愛する人だったら愛する人を選んでほしいなと思ったのですが(というか二択ならそっちが好みなのですが)、アルフェンとしてはそれらは天秤にかけるものではないというのがよかったですよね。

二択を迫られる状況を押し付けられて従うのではなく、両方を取る第三の道を選ぶことができたのは、自分自身の主人であれというメッセージにも沿っていて綺麗な結末だったと思います。どうぞ末長く幸せに暮らしてください。

 

 

シオン

王道主人公に対する王道ヒロインでしょうか。ツンツンだった序盤からエンディングに至るまでの段階を踏んだこまやかな変化が丁寧で、一番思い入れができたキャラクターです。最初の頃を振り返るだけで涙目になってしまう。

 

最初はツンデレ(でもないですが)腹ペコキャラって古典的すぎないかと思ったのですが、しっかり序盤からかわいげを見せつつ、野営と料理を繰り返すシステムによく噛み合ったキャラになっていてよくできているんですよね。

食事や釣り、レシピ関係のイベントのたびに毎度かわいかったり面白いリアクションを見せてくれて好感が積み重なりましたし、最終的には料理ネタで感動できるイベントもあってよかったです。

最初はごはん大好きなのに料理が下手で、アルフェンもたいがいなのであまり満たされない/貧しい状況から始まったのが、料理を習ったり食材やレパートリーが増えたりしてどんどん豊かになっていき、食事によって他者を満たすところにまで至るのが感動的でした。

 

腹ペコキャラである、つまり飢えているというのは、シオンが人との関係に貧しく、愛に飢えていることと無関係ではないデザインだと思います。

食事が好きなのに料理が下手で、でもうまくなっていく(おいしい食事を食べるすべを持たないが学んでいく)、というのはこうして見るとわかりやすい対応ですね。

また、腹が満たされることと心が満たされることは強く結びついており、食事を共にすること、食事を他者に作ること/作ってもらうことは、ただ命をつなぐ以上にコミュニケーション、人間関係、愛情において大きな意味のあることです。

なので、シオンがさまざまな出来事を経て感情豊かに活き活きとしていくことと、食事や料理の場面でも豊かになっていくことが呼応しているというか、食事の場面でこそ最もそれを感じられるのがとてもよかった。最終レシピももちろんですが、チーズぶっかけてるときの笑顔ですよ。よかったねえ。

 

 

茨を持つために他者との関係らしい関係を持たず、持つこともないと思っていたシオンが仲間たちとの関係を築き、大切な人と愛しあい、心から生きたいと思うことができたのがとても感慨深くて、要所要所では泣いてしまいました。

シオン自身がみんなのことを大好きだから、大好きになってしまったから一人で旅立とうとするのなんてもうほんとダメでしたね。

 

生い立ちを思えば無理もないことなのですが、シオンは茨というどうしようもない現実そのものをひっくり返す(自分の命が助かる)発想というものは基本的に持っていなかったんですよね。茨のもたらす理不尽そのものを消すことはできないと思っていた。

そんな人生を終わらせようというときに出会ったアルフェン、茨を無視できる存在は、彼女にとってどんなにか驚きであり、大きなものだっただろうと思います。

でも、茨のダメージを受けず、スルーできるということは、少なくともお話としてはそれを乗り越えたことには全くならないのですよね。だからアルフェンは痛覚を取り戻し、その上でもう一度シオンの手を取らなければならなかったし、茨と戦い、消し去らねばならなかった。

 

再び炎の剣を握るためにどうするかと言えば実際単なる気合いだったわけですが、それも気合いでなければならなかったのだと思います。それほどの強い感情と覚悟であり、無茶である必要性がある。

アルフェンは痛みがあっても炎の剣を取りますし、茨があってもシオンを抱きしめます。それは感動的なことですが、シオンにとっていつまでも許していていいことではない。アルフェンがよくてもシオンにとってはつらいことです。それは愛しあうふたりの形としてよいものではない。

だからこそ、シオンとしては茨を取り去り、アルフェンとしがらみなく生きていきたいと思ったのですよね。

 

ルシオほんと名場面だらけだったなと思うのですが、特に最終決戦前の星空デートのシーンが好きです。アルフェンがシオンに告白しかけるところでシオンが星霊ぶっ倒して本当の意味でふたりっきりになったら聞かせて(意訳)と言うのがめっちゃくちゃかっこよくて。

ひとりぼっちだったシオンがたくさんの仲間に囲まれ、愛する人ととびきりの笑顔でいられるエンディングになって本当に本当によかったです。

 

 

リンウェル

パーティの中では一般ダナ代表的な立ち位置にあるキャラクターですが、実際にはダナの中でも特殊かつ差別を受ける一族の最後の生き残りであり全方向に複雑な思いを持つ……とかいう背景14歳に背負わすな〜!!

一族が襲われた経緯とか、そらそんなんいっぱいいっぱいになりますよ。大人でもつらいに決まってるのに。フルルちゃん、リンウェルのそばにいてくれてありがとうね……。

 

背負っているものが本当にあまりに重く複雑で、それらの全てを明かし、シオン(とテュオハリム)との関係を改善するまでに四章いっぱいまでかかったのはもうむべなるかな。

根は明るくて活発な優しい子ですし、憎しみや暗い複雑な感情を抱え続けたこと自体とても苦しかったろうと思います。テュオハリムに対してなんか気が合うって最初の方から自分でわかっていただろうに、話してる途中でこいつはレナなんだってハッとしてしまうような場面もあって。

時間がかかったぶん、シオンを助けに行こうというときの「シオンはまだひとりぼっちのままだ」ということば、その後のシオンとの和やかなやりとりやラストのハグには泣かされましたね。茨がなくなったらシオンをぎゅーってする宣言だけでも泣けたのに実際ほんとにしちゃうからもう号泣ですよ。

 

ダナとレナの象徴と言えば基本はアルフェンとシオンなのだと思いますが、リンウェルはアルフェン以上にダナ人を象徴するキャラクターですよね。差別を受けていた側であるからこそレナへの差別を再生産してしまう、その人自身は悪くないのに憎んでしまう(悪いのは人種や種族ではなく、罪を犯したその個人だ、という今作の考え方は好きです)。

その根深い苦しみから抜け出す過程を描くにはあそこまでじっくり引っ張るのは正解だったよなと。ほとんどなあなあになってきている部分もあるのに、それでもやっぱり「レナだから」という意識から抜け出せなくてギスギスしてしまう。そういう状況から引っ張り出してくれたのはこれまで築いてきた関係だったということですよね。

 

ギスギスしている間にしろ、本気で派手に揉めそうになったり、言ってはいけないことを言ったりしたらアルフェンやキサラがしっかり止めてくれるのは見ていて安心でき、よかったです。

リンウェル自身も境遇を考えればあれでも大人しすぎるくらいですし、ちゃんと反省もするし、なんかいい人たちでよかったな……というか、気を遣って作ってあるなと思いました。よい。

 

一山越えると性格の本来の部分が出てきてぐっと明るくなったのがホッとしました。笑顔がニコッじゃなくてニカッて感じなのがかわいくて好きです。今作はキャラクターの表情がよくできているなと思いますが、特にリンウェルが好き。嫌そうな顔とか、ギャグシーンでの真っ青になってる顔とかが好(ハオ)。

ギャグシーンと言えばやっぱりリンウェルではパンケーキが面白かったです。オチにプレッシャーを感じて必死になるの好きすぎる。よりによってフクロウ完遂した直後に見てしまったので、フルルちゃんとの涙の家族愛を見せた瞬間パンケーキに叩きつけるリンウェルになってしまいましたが。

 

素ではおてんばで好奇心旺盛で、いつも一生懸命がんばりすぎちゃっているくらいで、ちょっと見ていて心配にもなる、リンウェルのそういうところをロウがごく普通に好きなのがよかったですね。

基本は歳の近い同士仲良くしていて、なんか当然のようにお互いいいなと思っているCPなのが萌えるんですが、それでいてシリアスな部分でのつながりもしっかりあるので隙がない。ふざけあってるのがほんとかわいいんですよね。

しかしお互い好きなはずなのに(ロウの片想い寄りですがリンウェルも憎からず思っている描写はある)相手の気持ちにだけは気付かないのがもどかしい……少女漫画やこれ。

 

ロウ

アルフェンがいなかったら主人公だったよね、と思うようなこれまた正統派の男の子。でもアルフェンがいなければロウもシスロディアで漫然と死ぬのみの命だったはずなので、この物語の主人公はアルフェンなのです。

服が薄手のヒラヒラした生地なのが3Dモデルではよく表現されていて、フィールドで操作していると無意味にピョンピョンさせてしまいました。出身はカラグリアとはいえシスロディアで着替えるのにあんなペラペラ脇腹丸出し服じゃ不安だよ。左横から見るとお願い服を着て……と思います。服を着て(着てる)。

 

基本的には明るいバカ系なのですが、総合的な印象としては思ったより大人しいというか普通ですよね。かなりシリアスなキャラでもありますし。蛇の目に入った経緯とか妙にエグいんですよね。

でもそういう過去を踏まえるとなんなら明るすぎるので彼はすごい。場を明るくしてくれるのでとてもありがたい存在。ほんとにおバカではあるし、ムードメーカーでもあるんですけど、愚か者とかお調子者ではない、そのたぐいの明るさはむしろ持たない人であるのが設定に対してしっかりしていてよい。

ついつい俺難しいことはわかんねえけどよ……(直感で正解)みたいなキャラを想像してしまうのですが、ロウは別にそういうのではないんですよね。難しいことは考えてもあまりよくわからない、だけど考えること、自分なりの答えを出すことからは絶対に逃げない。そういうところは本当に立派な人です。

 

実際世界がどうの、レナとダナがどうの、未来がどうの、みたいな大きな話をみんなが自分ごととしてしっかりと考え、理解し、正解ややりたいことを選べるか、というとそうではないはずで、ロウはそういう小さな視点の存在としてあるのかなと思います。一番一般人な感じだし。

基本は普通の男の子で、間違いをしたり、悩んだり不安になったりするけれど、だからこそのものが描かれていてロウ関係は好きです。自分が取り返しのつかないことをしてしまったから、たくさんつらい思いをしてきたから、だから同じように傷つこうとしている人になにかをしてやりたいと思える人なんですよね。優しい、勇気のある人です。

普通の人ではあるけれど、でも大多数の普通の人にはないものを持っているのがロウなんだなと思います。立ち上がって戦うことができる、仲間のために体を張ることができる、もう逃げないと決意できる、そういう勇敢さがよかったです。

 

リンウェルとの関係では、なんだか健気な感じで応援してしまいました。わりとアピールしてるというかだいぶわかりやすいのに1ミリも想いが通じてなくて不憫。幻の花とかはだいぶ頑張ったんだからもうちょっと報いがあってもよかったのでは!? ロウの日頃の行い説もありますが。

リンウェルのところでも書いたのですが、ロウがごく普通にリンウェルのこといいなと思ってるのが好きなんですよね。撫でたいと思ってるの好き。ちっこいのにがんばっててえらい、そういうふうに愛おしく思っているのがかわいい。

パッと見とは逆に、リンウェルが案外無茶する子でロウはそれを不安に思ったり心配する側なのも好きです。あまりそれをわかってもらえないんですけど。台詞のない場面でもリンウェルに何かあったら真っ先に動いていたり、リンウェルを守ろうとしていたりするのがよかったです。リンウェルちゃんに想いが通じるといいですね。がんばれ〜。

 

 

キサラ

釣りキチブラコン妹お母さん女騎士、属性が盛り盛りすぎる。とにかく大人で、何事も落ち着いて受け止めてくれるのがとても安心感があり、好きなキャラクターです。

ちょっと揉めたりまずいことを言ったりしたらすぐ注意してくれるの、家事とか以上にお母ちゃんなんですよね。大人らしいだけじゃなく、けっこうすぐはしゃいだりするようなところもあってかわいいのでさらによし。声でかいんだよな(LOVE)。

 

とはいえ単に大人だ・面倒見がよいと言うよりは、そのようなポジションであること、人を支えることにアイデンティティを見出しているタイプの人なので、ちょっと周りがしっかりしてくるとどうしていいのかわからなくなる、みたいなところもあるんですよね。

夢や理想についても旅立ってからさらに迷って思い直す流れがあったり、けっこう見た目よりも悩める若者っぽいところもあったりして、サブクエとか見てるとメインストーリーの方でもっとキサラが目立つ展開があってもよかったなとも思いました。いつも落ち着いて構えてくれてるのは本当によかったのですが。

 

キサラの生き方についての葛藤はしっかりと作品の内容に沿ったものになっていてよかったです。単なる身分や境遇の上のことではない、言わば真の意味での「奴隷」とはどういうものであるか、奴隷を脱する(自分の主人になる)とはどういうことか、という話をこの作品ではするのですが、キサラやメナンシアはこのテーマのど真ん中にあるのですよね。

テュオハリムは従来型の支配を基本的に放棄していたのにも関わらず、キサラはそういう意味では奴隷のままだった、自ら「奴隷」となっていた、というのが面白いところだと思います。誰かに従うのを選ぶこともちゃんと自分の意思であればよいのですが、何も考えず、その相手のことを知ろうともせず、ただ命を委ねているだけではいけないのだという話ですね。

 

キサラが現実のテュオハリムを突きつけられてショックを受けたのは、元はと言えばそのようにテュオハリムについてきちんと知らないまま勝手に理想を見ていたからです。テュオハリムはテュオハリムでいろいろとダメではあったのですが、そこはキサラの問題です。

キサラ自身がそのことについて、またその後も旅をしていく中で、きっちりと自戒でき、そこから前に進もうとできる人なのは好感が持てました。キサラに限らずパーティメンバーみんな決して無謬ではなくて、けれど間違ってしまったからこそ考えられることもあれば、他者に差し伸べられる手もあるのが好きです。

自分の主人であること、あり続けること、自分の理想の芯を捉えること、捉え続けること、それらは難しいことです。流される方が、何も考えない方が楽だからです。なので、そこから逃げずに考え続けることのできるキサラさんはかっこいいなと思いました。

 

テュオハリムとの関係性はやっぱり一番おいしいところで、終盤のテュオ呼びはほんとグッときましたね。というかアガりましたね。最初の頃、キサラはテュオハリムとはどういう人物であるのか、その本当のところを一切見られていなかったのですが、その間違いを知り、個人としてのテュオハリムと付き合っていくことを決め、一緒に旅をしていきます。

テュオハリムの内面について深く触れられるのはかなり終盤です。あそこまで、アルフェンやキサラがそれだけ時間をかけて彼に関わり、関係を築いてきたからこそテュオハリム自ら過去を開示し、彼自身の抱える問題についてひとつ乗り越えることができたのだと思います。

で、からの、そこまでやってからの、やっとこさのテュオ呼びなんですよね。テュオハリムって長いのにみんなちゃんと呼んでるなあ、に慣れきってからの爆弾すぎて大興奮してしまいました。やり口がうまい。

愛称で呼ぶということは、ひとつに親しみの表明ですし、それを許すということもそうです。偶像のテュオハリム様がただの個人のテュオハリムになり、テュオになるということ、そこに至るまでの積み重ねに思いを馳せるととても楽しいですね。パーティ全体でもけっこう長く付き合ってきて、しかしようやくキサラだけがその域に至れるのがテュオハリムのめんどくささなのですが、そこもまたよし。

 

テュオハリムとの間にある感情はわりと解釈に任せる感じの演出でしたが、けっこうどんな感じの将来になっていてもしっくりくるなと思います。しれっとくっついていても、恋愛感情が無のままやっていくのだとしてもわかる感じがある。

キサラ自身の理想、将来図の根っこにはメナンシアがあって、レナのリーダーとなるだろうテュオハリムとは若干フィールドが違う感じもあるのですが、どっちにしてもこれからもテュオハリムのそばにいてあげてほしいなあとは思ってしまいますね。希望としては。

 

テュオハリム

いろんな意味で一番面白かった大賞。ギャグキャラとしてもピカイチでしたが、そういう面白みやズレたところもしっかりとストーリーやテーマに沿って設計された人物像の一端なのが明らかで、噛みごたえのあるキャラクターでした。

あと顔と声がマジでめちゃくちゃいい。アップになるたび新鮮にウワッ綺麗……と思える顔なんですよね。今作は前髪から目が透ける表現が美しいのですが、テュオハリムは前髪がうっとうしい美形なので恩恵受けまくりやなと思いました。もう本当に綺麗なんだよなこの人……。美形ゆえかなんでも似合うのもお得感があります。

 

印象としては役割から逆算されたキャラクターなんだろうな、という。無駄がなく感じると言いますか、作品における意味、役割が一番わかりやすいんですよね。パッとテュオハリムってどんな人かと聞かれると変な人、いろいろとけっこうダメな人、みたいな感じになると思うのですが、なぜ変な人であり、弱く欠落のある人でなければならないのかはとても明確です。

変である、ズレているというのは相対的な感覚です。テュオハリムが何に対してそうであるのかと言えば、それは双世界の常識や慣習、マジョリティに対してです。暴力と恐怖でレナがダナを支配し搾取するのが当たり前である世界で、テュオハリムはそれを拒む人間として置かれます。

それにはテュオハリムが「変」でなければならないのですよね。レナの中でも上位の階級に生まれ育ち、領将となったような人物がなぜメナンシアをレナとダナの共存の場に変えたのか、その回答がテュオハリムが根っから(現状の)社会に迎合できない、混じり合えない人物であるから、というのが好きです。

日常やギャグのシーンではその変さが面白さや愛嬌として魅力的に、そういうふうに過ごす一方で世界に馴染めない孤独を抱え続ける人であることも描かれるのがまたよかったです。死にたい人なのでシオンに「生きろ」とはっきり言うことができなかったと取れるところとか、テュオハリムの描写は彼の人格に対して誠実であると感じられて楽しかった。

 

またテュオハリム自身が言うように、彼が弱い人間であり、夢も志もなく、ただ社会に迎合できず逃避していたのは一面の真実ではありますが、それと同時に彼が成したことの大きさ、人の心を動かし、メナンシアを変えたこともまた動かしがたい事実であるのがまた好きで。

たぶんテュオハリムにとっては本当に何も持たず何もできない、無能な人間であったほうが満足だったのだろうと思いますが、それでも彼は「持って」いるのですよね。地位も能力も魅力も高いものを持っていて、そこから逃れることは生きている限りできない。

かつてそのせいで親友を殺し、望まぬ領将の地位に収まり、しかしそこから逃避した結果としてもまた過ちを犯すのならば、結局は自分のなんたるかを受け容れ、向き合っていくことしかできない。テュオハリムがそれを贖罪とし、やるべきこととし、新たなレナの指導者になる結末を迎えるのは話が綺麗でよかったです。

 

その新たな指導者、新時代を導く者としても、テュオハリムが変な人であることに必然性があるわけですね。世界を変える先頭に立つ人は、当然それまでの常識で凝り固まっていてはいけないわけで。

そして彼らが作るこれからの世界とは、支配と独裁ではなく、赦しあうこと、つながり助けあうことによる世界です。そこにテュオハリムが無謬ではなく、弱く助けを必要とする人であるのが効いてくるのがよくできてるんですよね。完璧な、ひとりで立てる人では相応しくないとすら言える。

これからも迷うだろうし、間違いもするかもしれない、そういう世界で未来だから、テュオハリムもそういう人物なのだなと思います。リーダーではなく代表のほうがニュアンス的には合ってるんでしょうね。ほんといろいろと考えて楽しいキャラクターでした。好きだなあ。

 

 

ソシャゲ系は全く触っていなかったのでベルセリアぶりのテイルズだったのですが、私テイルズ好きだなあと思えて楽しかったです。ベルセリアといえばアイゼンですが、エドナちゃんもアイゼンも顔がよくてよかった。顔がいいのはよいことなので。再会とかはソシャゲでとっくに何回もやってるだろうしZエアプなのでコメントすべきことがないんですけど楽しかったですね。あといっぱい喋ってて嬉しかったです。