ひっつきむし(独断と偏見による)

だいたいゲームの感想です

「カリギュラ2」の感想

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カリギュラ2をプレイしました。プラチナも取りましたのアピール。イェイ。

前作というかOD版も先日プレイしたのですが、どちらも遊んだ感想としては、2はあらゆる面において前作を魅力はあるけど微妙と感じた人にこそ遊んでほしいゲームだなという感じ。ODを遊んでいて不満に思った点はほぼ全て改良されていると言ってよいです。ファストトラベルだけなんか劣化してますが。

 

前作と同じ世界、5年後の設定ですが、今作と関係ある要素は作中説明が入るので前作のプレイが必須ということはないです。むしろ予習して挑むなら小説版まで読まないといまいち唐突に感じるかも(前作→小説版→2の時系列なので)。小説版は前作のフォローとして文句なしに面白い作品なのでオススメです。

小説版は個人的にすごく好きなんですよね。ゲームを遊んでいてストーリーに対して不満に思った部分が丁寧にカバーされていて、こんなん最初から本編でやれとつい思ったくらい。

その小説版の作者さん(関涼子さん)が今作ではシナリオで参加しておられて、同じ味がするなーという感じでした。特に茉莉絵関係はやはりと言うべきか素晴らしかったですね。なんかたぶん関さんが好きなんだと思う、私。

 

以下ネタバレありです。だいたいキャラごとにざっくり。

 

 

キィ

抱きしめたくなるような愛らしさのよいマスコットもといヒロイン、もといアイドルでした。もう本当にかわいいんですよね。

幼くて天真爛漫で元気いっぱいで力強くて、最初は無神経だったところから何ごとにも一生懸命思い悩みつつ成長していく姿が健気で。知らないうちにああかわいいな、大好きだなと思うようになっていました。

 

演じた峯田さんの声とお芝居がまたいいんですよね。明るいかわいらしさから苛烈な怒り、しょげたときの弱々しさ、包容力を感じさせる終盤まで、いつも感情がストレートに届いてくるので、キィが涙するような場面ではついついもらい泣きしがちでした。

涙目の立ち絵がまたかわいいんですよね。シャニマスに出てる人だよねーくらいの認識だったのですが、もっといろいろチェックしてみたくなりました。歌もよかったし。

 

歌と言えばキィ版はディレクションが面白いですよね。もっと素直にうまく歌おうと思えば余裕で歌える方だと思うのですが、あえて歌詞のニュアンスにそぐわない表現になっていたり。

でもそのあたりは作中でも悲しい歌だからって悲しく歌わないで、悲しみを吹き飛ばしてやりたい、みたいなことを言っていますし、キィなりの表現、歌へのアプローチなんですよね。こーりんこーりんゆーとかはちょっと笑ってしまうけども。かと思えば痛切に歌い上げてきたりもするので油断できない。コスモダンサーとかかっこいいんだよなあ。

 

最初はニンゲン意味わかんね〜みたいな感じだったのがだんだんと人の気持ちを理解するようになり、やがては人間を超越していく(バーチャドールとしてのアイデンティティをはっきりと得る)描写が好きなんですよね。

特に病院でのフィールドトークが印象的です。見知らぬ多くの人々よりも身近で大切な少数の方がよほど価値があるように感じられること、それを愛とも言うという話ですね。これが感慨深くて泣けてしまった。

ですが、キィは最終的にはすべての人間を愛し、抱きしめる存在になるわけです。人間はなべて愚かで小さな、間違いばかりする存在かもしれない、だけどそれを愛してくれる存在、そういうものにキィはなったのだという結末ですね。現実に存在せず、実際に会うことができなくても、心の中にいつもいて、見守っていてくれる。

それでこのゲームはアイドル、バーチャドール(ボーカロイド)、もっと言えば作られた存在、すべての存在しないもの、フィクションへの愛の物語だったのだなと思いました。

帰宅部がもう二度とキィ本人に会えなくてもキィを思い出し、キィの歌を聴くことでこれから先も励まされていくように、私たちはアイドルから、音楽から、フィクションから同じように愛されている、現実を生きていく力をもらっている、そういうことだと受け止めました。いい話だったなあ。

 

 

ノトギンいいキャラでしたね。誰にでも分け隔てなさそうな顔をしておいて(顔?)、けっこう好き嫌いやこだわりが激しくてわかりやすいのが人間くさくて好きです。あと心広そうに見えてわりとすぐ怒るし。もちろん優しい人なんですけど、それはそれとして地雷が多いんですよね。

怒るとなんかヒヤッとするオーラ醸し出してくるのがクセになる味。山本さんと密談してたのがバレる一連の流れがある意味一番好きです。ノトギンにそんな目で見られると胸が苦しくなっちゃうので……。あと褒められて嬉しいかわからんけど(というか嬉しくないだろう)美脚で好き。好きと思うのは許してほしい。ダメ?

 

吟はキャラエピが特に印象に残ったキャラのひとりですね。クィア的な特徴や悩みを持つキャラクター自体は古今東西に珍しいというわけではないですが、吟におけるそうした問題に対するアプローチは今の時代らしいかなと感じたところでした。

キィの反応がいいんですよね。よくわからないので一生懸命調べてみたというのがまずよいのですが、その上で検索結果を押し付けるのではなくて、吟は吟だと自分なりの考えを伝えてくれるのがすごく好きでした。

「どっちでもないならどっちものいいとこどり」ってキィらしいですよね。なんだか単純であっけらかんとした論ではあって、でもその分いろいろこんがらがってしまった吟本人にはなかなか出せないものだったのじゃないかと思います。9では吹っ切れた様子が見られてよかった。

どっちも食べたいならどっちも食べればいい、やりたいことだけを選びたい。現実的にはハードルもあるでしょうが(家族の理解なさそうすぎる)、そう思うことさえできなかった吟には本当に大きな変化ですよね。そういう結論の部分においては、結局のところ性別どうこうはあまり関係ないとも言えるのかな。

 

7での選択肢で「わからない」が正解なのも好きでした。男とか女とか関係ないなんて言うだけのことは簡単で、でも実際にそうなってみたらどうかなんてなってみないとわからない、と思ったんですよね。そうなってみないとわからないことを一番思い知っているのは吟でもありますし。

そういう私自身の感覚に合っているところ、簡単に片付けようとしないところがこのゲーム好きだなあと思えた場面でした。正直前作だとはいはい肯定しとけばいいんでしょ、と思ったのでこの辺は本当によかった。

 

 

鐘太

ちいかわって言ったやつ誰だよ(ぶくぶ)。でも令和に生まれてさすまた持ってる時点でちいかわ呼ばわりはいずれ避けられなかったと思います。さすがにさすまた持ってて警官じゃなかったらビビるわと思わせておいて本当に警察官なのが性格出てる気がして好きです。

さすまたは警官のアイコンであると同時に、直接人を殺傷しない武器であるところがまたそれらしいですよね。あえて人を傷つけることなどもうしたくないという気持ちの表れなのでしょうし、からの奥義で問題のピストルが出てくるところがアツい。

 

ゴン太先輩は本当に優しくて真面目なのが好感度高かったです。何にでも誰にでも一生懸命考えて向き合っているところ、みんなの安全や幸せを考えているところ、そういう人柄の良さがちゃんと周囲に伝わっていて愛されているところがよかった。特に塔での鐘太関係のフィールドトークはじんとくるものばかりでした。切子に感謝されるやつとか。

一番好きだったのはやっぱりクランケとの絡みですかね。実際にはたった一度しか会ったことのない関係でも、そのたった一回で鐘太の優しさが伝わってクランケに好かれていること、鐘太がずっと隣の空席を見続けてきた日々のこと、こういう思い入れ、不思議な絆って好きなんですよね。

 

自分がしたいことをすることで人を傷つけてしまう、そのある意味での究極形を経験した鐘太が、それでも人は自分の思いに素直でいるべきだと言えたのが好きです。

したいことをすることが自分らしくあること、生きることであり、逆を言えば自分として生きている限りしたいことをしてしまうもので、それを受け容れて向き合い続けるしかないというのが鐘太のキャラエピだったと思うのですが、そのあたりを踏まえた内容でよかったです。こういう開き直りって好き。

 

 

小鳩

いかにもいまどきのチャラ男なルックスがいいですよね。ピアスえぐくてかわいいです。なんなら1ミリも制服を着ていない可能性がある(ボトムスすら制服のスラックスではないように見えなくもない)あたりがオモロい。自由すぎる。

だいたい怒りのエネルギーで稼働している人なのですが、怒りであるにしろ基本アッパーでまっすぐで見ていて気持ちよく、いてくれるとテンションが高めに保たれるのがよかったです。ムードメーカーというか。とにかく叫びまくりで上村さんの喉は心配になりましたけど。

空気がヒヤッとした場面でもわりとアホなこと言って和ませてくれるし、それでいて肝心な場面ではちゃんと考えているので隙がない。茉莉絵の生死を決める場面ではすごくかっこよかったですよね。

理不尽に誰よりも怒っている人だから他者に降りかかる理不尽も許せない、怒っていたらそれを吐き出す、そういうシンプルなところがよかったです。頭に血が昇りやすいけど諭されたら聞いてくれるしちゃんと謝れるし、いい人なんだよな。自分を縛るものを武器にするカタルシスエフェクトもキャラがよく出ていて好き。

 

小鳩と言えばやはりメビウス経験者である、前作の「モブ」のひとりであるところですね。初代帰宅部にどんな物語があって、彼らが何を現実に持ち帰ったところで有象無象のモブたちにはそんなものはなく、ただ時間を奪われただけ。前作プレイヤーでそのあたりモヤっとした人も実際いるのではないでしょうか。

小鳩の存在は、そのあたりに誠実に向き合おうという意思を感じて好きです。モヤっとするところありきではあるのですが、こういうのは続編でしかできない話なので面白いですよね。

しかし、小鳩という単一の存在の話をすればするほど、「メビウスのモブ」という集団から離れていくことにはなります。小鳩ひとりがここでたまたま「主人公」になったところで、それは彼らすべての救済には当然なり得ません。どうしても矛盾の出てくる存在でもあるんですよね。

小鳩に現状について「幸運」「ボーナスタイム」ということばを使わせているのは、その矛盾に対してせめて真摯であろうとする姿勢のようにも思えました。

とはいえその幸運を自分のものにできたのは小鳩自身が向き合った結果なんですよね。たとえば結局帰宅部に入らなかったとしたら絶対にああはならなかった。

逃げないで立ち向かうこと、そうするべきは今この瞬間であること、そうできることの幸運に気づけたこと、それらの大切さを知れたこれからの小鳩は強いなと思います。たぶん立ち向かうべき瞬間というのは人生にいくらでもあって、でもそこにちゃんと向き合うことは難しくて。しかし小鳩はすでにその「幸運」を知っているんですよね。だからきっとやっていける。

 

 

劉都

態度がチョモランマのクソガキさんで、これがまたかわいいんですよね(クソガキキャラ大好き)。少年キャラ好きですし内山さんが好きなので、今作をプレイする上での大きな目当てのひとつだったのですが、思った以上に好きになったキャラで大収穫でした。やったね。推しです。推しなので少々長くなります。

いいなと思ったところを挙げればもはやキリがないのですが、ひねくれているように見えてまっすぐで純粋なところが特に好きです。大人のグチャグチャしたところを見てびっくりしてるのかわいすぎるんだよな。大人びているようでどこまでもまだまだ子供なのがよすぎる。

なんというか、そんなことなんて思ってもみないんですよね。劉都の中では医者は人命が第一だし、ラスボスは大層な思想の持ち主だし、お茶なんか何回でも一緒に来ればいいし、天才の俺ならなんでもできるんですよ。

未来の先細りに絶望しても、未来そのものがなくなったり、やろうとしたことが叶わないなんてことは考えもしない。若者、ピカピカしとるなあと思いました。

カタルシスエフェクトはいかにもイエスキリストですが、天才の比喩としての「神の子」、義務に殉じる生き方から受難者の茨の冠・回避盾のスタイル、与える者であることから聖杯なんですかね。劉都は生まれながらにして特別な存在であり、それゆえに苦難を受ける者であり、希望であり導き手である人なのでぴったりなモチーフだなと思います。知識がないので的外れだったらアレなんですが。救世主であることに将来を期待したいですね。

 

ともかく劉都くんは帰宅部の見た目も中身も最年少であり、最年少であることに大いに意義のあるキャラクターでグッときました。

「やり直しの世界」である特性上大人の多いリドゥに招かれた子供であることにまず独自性がありますし、そこから掘り下げる方向も面白かったです。劉都の後悔は事前に予想できた人いなさそう。

劉都があれほどまでに未来を恐れたのは、結局のところやりたいことがなく、やりたいことをやっていいとも思わなかったからなんですよね。今まではただ義務感で生きていたから。やりたいことがこれと決まっていれば、他の可能性なんてそこまで気にすることはなかったのではないかと思います。

けれどそこまでガチガチになる必要はない、好きなようにやっていい、才能を無駄にしたっていいと知って、やりたいこともできた。

いかに劉都とはいえ、大人になっていけば諦めなければならないこと、妥協しなければならないこともあると思いますが、それでも彼なら決めたことはやり遂げられると信じられる気がします。ことば通りそれを証明してほしい。

 

ほんと塔でドクトルにウワー言うシーンが大好きなんですよね。劉都の良さ、あの一連の流れに全部詰まっとるからね。

俺は大人だからお前は子供だからって頭を押さえつけるようなことを言う、勝手に諦めて絶望しやがる、そんな大人がどうにもムカつく、みたいなところが普通に子供なのですが、それが眩しいんですよね。大人がなかなか持ち続けられない眩しいものを劉都は持っていて、持ち続けてくれるのではないかとも思わせてくれる。

ささらさんが劉都に「支えてくれてありがとう」というトークがありますが、劉都のそんな部分に支えられていて、引っ張られていて、同時に劉都をよい距離感で見守ってくれている、帰宅部全体との関係性が好きです。まあ私はお姉ちゃんなんだけどね。

 

 

切子

基本的にズバズバ言うキャラで、かなり物言いがキツいところもあるのですが、だいたいは正論か相手が鐘太か小鳩(つまりギャグ)なのでそんなに気にならなかったかな。言いすぎたら反省できる人ですし。ノトギンと妙にヒリつくシーンなんだったんだろう(わりと好きですが)。

宮本さんも黒沢さんも演技が好きな声優さんなので、パンドラとのやりとりがたっぷり聞けてすごくよかったですね。ふたりとも生っぽい演技をされるのでよく合っていたというか。ヒートアップしてるくだりも好きなのですが、戦った後やその後のシーンでのテンション低めの会話が気に入ってます。染みる。

 

本筋では人では人の想いを受け止めることはできないという話の伏線的な役割になっていましたね。アイドルとして桃奈がいかに求められたか、そしていかに苦しんだかをしっかりやることで、リグレットとキィに説得力が出ていました。

とはいえ人が人に求めること・それに応えることの全てを無理だと言っているのではない、と表明しているのも切子のエピソードで、このあたり言いたいことが明確で好印象な作品でした。

 

他のキャラのエピソードにもかなり共通している部分なのですが、切子のキャラエピは無理に変わろうとして苦しむのをやめること、ありのままの自分を受け容れることの話だったのがよかったです。今っぽいスタンスかなという気も。

嫌なことから離れようとするあまり、やりたいことや好きなことまで否定してしまってつらくなる、というのは自分にもそんなとこがあるかも、と思われて刺さりましたね。自分が本当は何をしたいのかを見失わないこと、大事だなあ。

 

 

ささら

いつでも優しく落ち着いていて崩れることがなく、間違ったことを言わないので見ていて本当に安心できる人でした。ささらさんだけは絶対大丈夫と思えていたのは大きいですね。

後悔を持つ人だけが招かれるはずの世界で後悔を持たないという、わりと反則めいたキャラクターなのですが、ささらさんがいなかったらもっとギスギスガタガタしていたに違いないとは思います。いつもみんなを見守ってくれるささらさん大事。

常にニコニコしていて緊張感がないとすら言える人なので、場を和ませてくれる役割も大いにありながら、怒れば一気に締まる感じもあっておいしいキャラですよね。諸星さんの演技もほわほわとあたたかみがありつつ、達観していて芯のある空気も出ていて好きです。

キャラエピは意外にもそんなささらさんとちょっと対立するという内容で面白かったです。ささらさんの言っていることはたぶん間違ってはいなくて、でもそんなの納得なんてできないっていうのがやっぱり素直な気持ちで、それをささらさんと分かり合えてよかった。残り短い人生なのかもしれませんが、いっぱい長生きして茉莉絵ともまた話してほしいですね。

 

お年寄りだけあっていろいろといいことを言ってくれるキャラなのですが、やっぱりマキナとの絡みが好きですね。楽士とのペアではここが一番好きかも。

塔でのやりとりの、「必死に生きていたらいつか死んじゃうことなんてきっと忘れちゃうよ」のことばが好きです。そうだといいなと思いました。マキナくんは本当にささらさんと出会えてよかったですよね。

マキナはささらさんの素性なんて知るよしもないでしょうが、ささらさんはマキナがおばあちゃん云々言うのを聞いたわけで、そのあたり余計に思うことがあったかもしれませんね。なくても間違いなく同じ対応をしてくれる人ではあるんですけど。

 

 

ニコ

いかにも闇が深いですみたいなキャラから出てくる実際深い闇!! 大まかな事情はかなり推察しやすいキャラですが、わかっていても重かったですね。痛々しい演技が印象的で、特に茉莉絵の生死についてのコメントがすごく好きです。あとニコなら!! ニコなら!! のやつとか。

別人を演じているというキャラクターですが、そのあたり本筋であえてキャラを掘り下げないカリギュラのスタイルだとあまり本筋で輝けないのでは……と思っていたら綺麗に辻褄を合わせてきていて感心しました。それになんだかんだボロ出しがちなんですが、みんな触らないので優しい。そういう優しさがやっぱりカリギュラのいいところだと思います。

 

キャラエピの一織の存在を認めたうえでリドゥではニコを演じることを続ける結末が好きです。「ニコ」は一織の演じる二胡であって二胡本人ではないというところに、ただの逃避や悲しみではなく前向きな行為として優しい意味が生まれる終わり方でよかった。

意外とカタルシスエフェクトの姿や能力に深く言及するような場面って前作からしてほぼなかったので(せっかく本人の精神に呼応したデザインになっているのに)、ニコのエピソードはその方向から掘り下げるものだったのも嬉しかったですね。

一見してニコの能力は応援団をやっていた明るくて優しい二胡のフリの一環のようですが、結局のところそこまで偽ることはできない、一織の心そのものなのだというのがすごく好きです。みんなを支えて癒してくれるのも一織だし、一緒に戦っているのは間違いなく一織なんですよね。そこがとてもグッときたところでした。

 

あとは茉莉絵関係がよかったですね。みんなとは同じ意見が持てない、みんなみたいに強くなれない。それに対して本気で悩むニコは本当に一生懸命で優しい子です。茉莉絵を殺せばいいと確信しているのだったら、そういう冷たい人間なら、そんな風に苦しむことなんてないんですよね。

茉莉絵の件が落着したような雰囲気になっても殺すべきだと思ったことをずっと抱え続けていて、塔でそれを吐き出すというシーン、茉莉絵とのやりとりがまた好きで。あんたのことでいっぱい悩んだんだから忘れるわけないじゃん、ってすごくいいですよね。

不器用でも懸命にあがいて頑張ることのできる、そんな彼女が報われる人生であってほしいなと思いました。

 

 

茉莉絵

天吹茉莉絵、本当にいいキャラだった……。ウィキッド頼りのキャラではなく、単体でしっかり完成しているのがよかったですよね。一方で水口茉莉絵を知るユーザーには特にグッとくるポイントもガッツリ用意されていてやり方がうまい。

天吹茉莉絵と水口茉莉絵は同一人物でもあるけれど別人格でもある、二つの人格を切り分ける部分と切り分けない部分の割り振りがちゃんとしてるんですよね。基本別人格で、水口の記憶をしっかり思い出したり水口人格に戻ることもない(バッドエンド以外)ので2からのユーザーでもちゃんと入り込めそうな(茉莉絵と同じ視点に立てる)つくりになっていてよかったです。

 

天吹は水口が演じていた優等生そのもので、でもそれが嘘偽りない姿です。それについて育つ環境が違うだけでそれだけ違う人間になる、ただそれだけのことだ、と結論されていたのが好きでした。本当はいい子とか本当は悪い子とかじゃないんですよね。どちらも本当の茉莉絵で、そういう意味では否定されるべきものでは全くない。

それを水口本人がちゃんとわかっていて、水口の目から見て天吹としての日々や帰宅部を悪くない、いい夢だったと言ってくれたのが泣けてしまった。バッドエンドであっても、水口が悪くなかったと思えたならμのやったことには確かに意味があって、そのことはよかったですよね。

 

天吹は本当に強い人で、見ていてかっこいいなと思うことしきりでした。自分の障害をわかった上で現実に戻ろうと決断することなんて普通はできませんもん。でもそう決めたのも、最終的にはそれが正しいからと考える以上に、みんなのことが好きで感謝しているからなんですよね。

勝てるかわからない戦いに挑むよりも、一人を犠牲にして助かるならそれを取るべきだ、というのはある意味で確かに正しい。茉莉絵もそれをわかっているからこそ最後まで悩んでいました。しかし悩ましいからこそ最後の決断をすることができた。それが好きです。

本当はどちらがいいかなんて判断がつかないからこそ、それが正解であってほしいと思う方へ、みんなで出した結論の正しさを証明するために挑むことができる。なんだかすごく人間っぽいですよね。

 

現実に戻った茉莉絵の人格がどうなるのかは想像にお任せのスタンスのようですが、どうなったとしても間違いなくリドゥでの経験や仲間は茉莉絵の力になるだろう、永遠に未来が閉ざされるなんてことはないだろうと思える描かれ方で正直ホッとしました。早くみんなと再会できるといいな。

 

 

マキナ

幼い幼い言われるしてっきり小学生とかかと思ったら15歳でちょっとびっくりしました。本名なのもビビったけど。比較対象が劉都とか関係なくだいぶ幼いですよね。初めての身近な人物の死を中学生でやっと経験するってどんな気持ちなのかちょっと想像がつかないんですけど。

そういう幼さ、メンタルの弱さ、純粋さを大人に利用し倒されるかたちになってしまったのはかわいそうなことだなと思います。自分が仕えているのはブラフマンでなくリグレット様だとかせっかくカッコよくキメても肝心のリグレット様はアレだし。

でもいい子ではあって、リドゥで得たこともあって、きっとこれからの人生ちゃんとやり直していけそうな終わり方になったのはよかったですよね。この子が不幸な結末になったら他のキャラ以上にやりきれません。一生懸命生きていってくれよな。

 

デザインはかなり大胆にロボでいいですよね。背骨のデザインがツボ。前作なんだかんだそこまでみんな現実と変わらなくてガッカリみたいな感はあったので、2では年齢・性別・本名から種族まで大幅に異なるキャラが多くいて嬉しかったです。ロボすぎてエンジン音で接近を気付かれる描写とかは笑っちゃうんですけど。

土岐さんの演技も好きです。ロボ口調と素の口調のギャップがナイス。素の口調がまたかわいいんですよね。笑顔もかわいい。塔で再登場したときのロボ口調からワンセンテンスの中で変化していく台詞、その後のおそらくアドリブで伸びの演技を入れている台詞が好き。

 

持ち曲の「永遠の銀」もすごくよかった。最初からあの壮大な曲がかかってよいインパクトでしたし、壮大ながらも子供っぽい、ストレートな恐怖の感情のある言い回しが出てくる歌詞がマキナくんらしくて好きです。あんなに壮大でかっこいいのにとにかくまだ死にたくないとしか言ってないのがよい。リミックスが嫌だよ嫌だよの連呼で始まるのもらしくて好き。

 

 

パンドラ

紅白アーティストにオタクの長文お気持ちソングを書かせる女、すごい。オルターガーデン、普通に聞いたらすごく綺麗な失恋ソングなのに、パンドラのことを知ったら愛憎反転オタクの歌にしか聞こえなくなる(それにしてもひとつの失恋ではありますが)のが面白いですよね。

一見落ち着いた綺麗なお姉さんのようでいて中身わりとただの限界オタクなのがかわいいところです。現実の過去は全然笑えないんですが。オタクとかホス狂とか、こういう人が実際いっぱいいるんだろうな……。

テンパってはぁ? マジ無理なんですけど……とか言い出すの、語彙がオタクで好き。黒沢ともよちゃんの生々しい演技がたまりません。あとめちゃくちゃエグいインダストリアルしてるのが好きすぎる。

 

パンドラについてはやっぱり切子との関係性ですよね。アイドルとファンは同じ人間同士でもどうしても遠くて、理解しあえなくて、お互いを敵のようにも思ってしまう。それで苦しんできた二人が、ぶつかり合い、ことばを交わすことで少し楽になれたのがよかったです。

塔での「傷ついたからって、恐れて閉じこもっていてもその傷のことしか考えられなかった」という台詞が好きで。それは切子もそうだし、ODでもイケPあたりに強く出ていましたし、カリギュラという作品の全てに通ずることですよね。

パンドラの問題にしろ外から見ればしょうもない、くだらないことかもしれませんが、本人からすれば本当に切実な大問題で、いろいろとカリギュラらしいキャラクターだったなと思いました。

 

 

ムーくん

家永ァ……。あんなキャラ作りしてるのに思いっきり本名で呼ばれるわ、楽士でムーくんって呼んでくれるのはそもそも素マキナくらいだわでかわいそうでした。まあブラフマンとかドクトルがムーくん言うてたら面白すぎるのでダメなんですが。でも御大呼ばわりは抗議すべきよあなた。

現実はダメ人間寄りではありますが、よくいるタイプ、ごく普通の人でもあるし(その分生々しいのですが)、ちゃんと地に足つけて働いていたし、何もなければ満足はできないなりに普通に生きていっていた人なんだろうと思うと本当に不運ですよね。人見課長と出会ってしまったのが運の尽き。どうなっちゃうんだろう今後の人生。心配……。

 

2では楽士に作曲能力ブーストかけてる描写がないですし、ムーくんにしても芸術方面の才能そのものを弄っている風ではない(人気そのものはやってると思いますが)ので、おそらく作曲能力は本物なんですよね。そのへんはちゃんとノトギンも褒めてる。

なので、「自分も運が良かったかもしれない」は意外にも真なんですよね。スワップアウト、耳馴染みがよくていい曲です。あのとき踏み出していれば、をドールPとしてはまだまだ叶えられる余地があるはずなんです。絶望するには若すぎるし。それに気づいて頑張れるといいですよね。殺人うんぬんとかはどうなるかわかりませんけど。

しかし記憶を消されたばっかりに吟との再会も和解もなく、こいつだけ得るものが何もなかったのかと思うとキィさんは酷いことしたよねムーくんに……。

 

 

#QP

山本〜! この人も現実が絶妙にありそうな感じで読んでいてドキドキしてしまいました。でも今度こそ頑張ろうという気持ちで、奮起してリドゥに来て、おそらく言動や婚活そのものは自分の力で頑張っていたわけで、リドゥに来たことだけが言わば間違いで、なんというか面白いですよね。

そこまで頑張れるんだったらそのまま現実で努力していればよかったはずで。言うてもまだ29歳なんですから、恋愛や結婚に対して諦めるには客観的に見てちょっと早すぎるんですよね。

それでも現実を悲観して、後悔してブラフマンの誘いに飛びついてしまった、リドゥしかないと思ってしまったのは悲しい話です。曲にしろかわいい系のわりにストレートに悲痛でおつらい。

 

小鳩に対してはたまたま思いっきり地雷を踏んでしまった部分も大きいのですが、フィーリング第一とはいえ多かれ少なかれ後悔して現実逃避するような事情がある上、リドゥでキャリアストップしている人間に将来性求めるのはなかなか無理な話だと思うんですよね。

強かでガッツがあって基本まともなのはかっこいいんですけどね。地雷女やってることに矜持があるの大好き。あと男女平等でハニー呼びしてくれるのはめっちゃ好きです。女部長だと段階を踏んで親友から始めてくれるし、イカす女。

 

 

ドクトル

designed desires、大好きですね。絶望すぎる。苦しくなるような無力感と絶望感に溢れた歌で、この曲があったからこそドクトルを好きだという気がします。「此処は最低。救いが無い。」とか好きなフレーズが多い。でもこんな曲病院で流しちゃダメだと思います。

この人が期待しても報われない、努力しても報われないことを延々と繰り返し続けているのは本当に気の毒でつらいです。必要以上に気に病みすぎているとかは劉都の言う通りではあるのですが、そんな正論通りに生きられるはずもないのが人間だというのはドクトルも正しい。そうなってしまったものはなってしまっているんですよね。

 

リドゥに来て以降は特に泥沼化の原因は主にクランケの方にあるようには見えますが、ドクトルの方もクランケにまともに向き合おうとはしていない、クランケの気持ちよりもただ罪を償うこと、自分が解放されることを考えてしまっているのが悲しいところです。真莉愛本人ではなく、罪と罰のことで頭がいっぱいになってしまっている。

でも、だからと言ってかつての10年もの日々、そこにあった愛情がもはや取り戻せないものだとは思いたくないですね。本当のこと、本当の気持ちを話し合えば、きっとやり直すことができると思いたいし、少なくとも真莉愛にはその意志がちゃんとあるんですから。

 

 

クランケ

なんかもう私が何か言うよりも祈っているだけ100回聴いてもらった方がいいよねという気がする。こんなの間違っているなんて、自分がせんせいを傷つけて縛りつけてボロボロにしているなんてわかりきっているけど怖くて怖くてやめられない、もう後戻りができない、そんな気持ちを考えるとついつい泣いてしまいました。高田さんのお芝居もすごくよくて涙涙ですよ。

きっとただ真莉愛が本当の気持ちを伝えればそれで済んでいた話で、積み重ねてきた長い時間もあって、それでも勇気が持てないつらさはどれほどのことだろうか想像もつきません。大変すぎる。

 

二人に必要だったのは閉じこもることではなく外からの手だったと思います。それを互いに掴むことができた、希望の持てる結末でよかったです。

鐘太に対する「わからないものどうし、もがくしかないよね」という台詞が好きで。もはやどうしたらいいのか、どうしたいのかもわからなくて、そんな彼女にとって同じように悩み、手を差し伸べてくれる、自分の気持ちを考えてくれる鐘太の存在ってすごいものだよなと思いました。せんせいとお幸せに。

 

 

思ってたよりすごく若くてなんだかショックを受けてしまいました。過去話もつらすぎて何を言ったらいいのかよくわからないというか……。父親から離れて自由に生きれば、みたいなのもなにか違う気もしますし。

ペラペラペラペラ嫌なことばかり言ってきて、ほんとに昔の人がなんて言ってたかなんて知らないよ!! という感じではあるのですが、そういう風に思うほどうまく話すことができない彼女の現実に打ちのめされてしまうようになっているのが性格悪いですよね。言葉より大切なものなどどこにもないらしいです。

 

それらしいことを言えば利用されて傷つけられたからって他人に同じようなことをしていいわけはないのですが、件についてはなんだかそう思ったところでスッキリもできないんですよね。なんの罪もない子供をそんな目に合わせる世界の方が普通に許せんというか……。

好きになれたかなれなかったかで言うとわりと後者よりのキャラクターではあるんですけど、だからこそ何か胸に残ってしまったなあという感じがあります。もっとかわいげのあることだって彼女には言えただろうし、でもそうしなかったんだろうな、とか。

夢破れて今後の人生どうしていくのかすごく気になってしまいます。なにかを成すことができればいいなと思うんですが。

 

 

ブラフマン

なんだったんでしょうねこの人。呆れるばかりなのですが、確かに娘の欲しいことばを与えてやることができていた、望みを叶えることができていた点もあったりして、余計にどうしてこうなった感がすごいです。よくもそんな斜め上に突っ走れたな。

娘はまだ同情できるんですが、この人については本当に言えることがない。ただもしも面と向かって小夜子と話すことができていたら、それだけのことだったのかもしれないんですよね。残念すぎる。

大層な思想があれば大勢の人を好きなように弄んでいいか、世界をめちゃくちゃにしていいかと言えばそんなことはないのですが、せめてそれがあってほしかったという劉都の気持ちはよくわかります。打倒するに値する敵であってほしかった。ガッカリなんですよね。刺されて当然ではある。そしてボツった曲を勝手に発表された棗くんの心情やいかに。

 

でもブラフマンにしろ小夜子にしろ、そしてソーンにしろごく個人的な動機の「しょうもない」人物がラスボスのポジションに置かれているのは、ちゃんとそれに意味があるのかなと2のEDまで通して見てみて、ささらやキィのことばを聞いて思いました。

帰宅部にしろ楽士にしろ、黒幕であるにしろ、みんな同じ人間なんだよなとは思ったんですよね。同じちっぽけな、それぞれの事情で悩み苦しむ人間で、それらはすべて同様に救われるべき存在で。そしてそれらと異なる次元の存在、救い手としてバーチャドールが置かれている。なんかもう宗教みたいになっとりますが、構図としてはそんな感じなのかなと。

 

 

リグレット

ポンコツカラオケマシーンならぬインターネットカラオケウーマンだったというわけね(?)。あれだけお上手に情感たっぷりに悲しい歌詞の曲を歌っておきながら、ある程度身近にあってそれを書いた楽士たちの事情や気持ちなんてどうやら1ミリも気にしていない、気にする必要も感じていなさそうなところがグロくていいと思います。もう真顔で歌聴けないのよ。

しかし神秘的な美貌から繰り出される顔芸とビビり散らかした態度、汚い悲鳴の振り切れっぷりは見ていてわりと気持ちよかったですね。好きではある。あとなんか……避けろとか言ってくれるので悪い人ではないのではないかと思います。

 

間違いなく悪気のある人ではないんですよね。ただ考えなしで幼い、自己中なだけで、人を傷つけてやろうとまでは思ってないんですよ。なので、わりとどう見ても本人の意思ではなさそうなのに罠だったのかとか言われて鐘太にすら見限られてたのはかわいそうでした。帰宅部さんのお怒りはごもっともなんですけどね。

現実に戻っても父親がどうなっているかわからないし(ちょっと生死微妙な感じですよね)、どうにかなっていた場合どうやって生きていくのかなとは心配にはなりますが、それはそれでやったことへの報いではあると思います。やってしまったこと、そしてキィに赦されたことを受け止めて生きていくしかない、のかなー。もしも悪いと思うならば、それこそ彼女は生きていかなければならないと思います。現実の世界で。

 

 

つらつらと書いていたらなんだか長くなってしまいましたが、それだけ言いたいことの出てくる作品に出会えて楽しかったです。なんならまだいろいろあるし。遊んでいて本当に楽しくて、遊び終えてしまうのが惜しくて、今のところ私の中では2021年ベストゲームですね。グラフィックさえまともならなあ、という感じではありますけど。また続編あれば嬉しいです。