「レイジングループ」の感想

 

レイジングループをプレイしました。けっこう以前のセールで買ってあったようなのですが、Twitterでフォロワーさんとおしゃべりしてたらやる気になったので。ところですっかり半年に一回更新すればいい感じになっているのでよくないです。反省。

 

さて、このレイジングループはジャンル「人狼×和風伝奇ホラーノベルアドベンチャー」。山奥のとある村に主人公が迷いこみ、謎めいた殺し合いの儀式「宴」に巻き込まれるところから始まります。無事村の伝承の謎を解き、事件を解決できるのか? というやつですね。

タイトルに「ループ」を関する通り、何度もいわゆる「死に戻り」を通して物語をやり直しながら前に進んでいくゲームです。何度もプレイし直し異なる分岐を選んでいくノベルゲームとループものは相性がよく、SFなりファンタジーなりホラーなりたくさんありますよね。「夏空のモノローグ」好きです。

この作品ではそうした何度もやり直すことが、シナリオのみならずシステムにもうまく噛み合ったかたちで反映されているのが秀逸な点ですね。まずチャート形式で分岐が視覚的にもわかりやすく、チャートの各ポイントに簡単に戻ることができます。べんり。

そして「KEY」というシステム。特定の分岐を選ぶ/EDを迎えることで「KEY」を取得することにより、指定された選択肢を解放してその先に進むことができます。これがチャートと選択肢上で最初からどのKEYを取ってくればいいのか示してあるのがよかったです。

私が基本的にイラチでノベルゲーはほぼ最初から攻略とにらめっこするタイプなのもあると思いますが、ヒントコーナーもあり、分岐とどうすれば先に進むことができるのかを視覚化してあるのはノンストレスで非常に助かりました。死にゲーはサクサクリスポーンが何より大事。このKEYがあればいいとわかっているのは攻略のモチベにもなりましたし、親切すぎるくらいなのがちょうどよかった。

それと「暴露モード」というものが搭載されており、トゥルーエンドを見たあとの周回でこれをオンにすることで、各キャラクターの心情など物語の裏側が見られます。「NO, THANK YOU!!!」とかにあるやつ。おまけシナリオも5本あり、かなりの大ボリューム。あらゆる可能性を模索したい、物語のすべてを知りたいタイプの方におすすめです。

 

シナリオはネタバレせずに書くのは難しいですね。ということで追記からネタバレありです。よろしくおねがいします。

 

 

 このゲームのシナリオを語るに欠かせないのが主人公・房石陽明さんの人格でしょう。言ってしまえば非常に都合のいい性格をしている人です。ループの、殺し合いの繰り返しに耐え、謎を解明し、馬鹿らしい行動や殺人者側になること、すべてのヒロインを攻略することを含めてあらゆる可能性を模索したい、そんな作品の構造とプレイヤーの欲求に自然に応えることができる、あるいはそれを上回りすらする異常な精神と知能とユーモアの持ち主。

そんな陽明を通して物語を見ることはノンストレスかつ驚きがあってとても楽しい体験でした。こういうことやれたらな、ということは基本なんでもやってくれるし、とにかく頭が良く、かつプレイヤーに隠しごとをするタイプのシナリオなので、こちらの予想を上回って動いてくれる楽しみもある。

そしてそれらに違和感や破綻がないんですね。自分はこういう性格だ、だからこの選択をする、という自己分析も丁寧に語ってくれるので、なるほどそういうことね、と呑み込みやすい。普通そうはならんやろというところでも陽明だもんな……で済むし、済むように納得させてくるのは強いです。

そういう本人の言うとおりのやべーやつ、と断じてしまうことは簡単ですし実際やべーやつではあるのですが、完全なやべーやつになりきれない善性やまともさの持ち主であったり、普通に(普通に?)女の子を好きになったりするところが人間くさくチャーミングで好もしいキャラクターでした。それだけに苦労というか孤独な思いをしてきたんだろうなという感じが良い。

他の異常者キャラもどこかそういう点があったり、意外と残酷さに振り切った感じがなかったりと、ライターさんが優しい方というかそういう方向性なのかなとも思いますが。もっと倫理観ない感じだったらそれこそみんなもっと狂ってたしめー子2回は殺してるでしょうね。スピンオフ的な出演とはいえトゥルーで生き残らせれば済む話なのだし。ということで、狂気や残酷さを求めるとやや肩透かしだったかな。好みの話ですが。作中でも陽明が「みんな普通のいい人」と明確に語っていますし、そこが本作の魅力ですよね。

 

そういう人物描写の丁寧さ、各キャラクターの立ち方もとてもよかった点でした。ひとりひとりの性格や思惑、その結果の行動、宴の内外での駆け引きなどきっちり描ききっていて、暴露モードでの各キャラの独白が特に楽しかったですね。みんなそれぞれしっかり考えているんだな、人間らしいところがあるんだな、というのがわかると楽しい。

特に好きなキャラのひとりが織部かおりさんで、彼女はパッと見以上に賢くてしっかりした方だというのが進めていくとわかる人なんですよね。しかし彼女の愛と強さは狂気と表裏一体であり、狂う可能性を持っているからこそ強くもあるのだ、というところがとても好きです。狂わなきゃなと思うんですがままならないのがたまりません。

もちろんというか脳直で好きなのは能里清之介さんですね。かわいいもん。不憫はかわいい。有能だしオタクだし一緒に死んでくれるし。エクストラで李花子さんに対して忍耐強く紳士的に接しておられるのが印象的で、この人にならすべて任せられると思いました。ハッピリーエバーアフター!

 

あとはやっぱりいろいろな意味で一番楽しいのが陽明がおおかみとなる暗黒ルートなのですが、作中最大のライバルたる橋本雄大さんがよかったですね。陽明と同じか上を行く存在であり、あたかも機知ルートでの陽明のポジションを埋めるかのような振る舞いで非常にワクワクしました。黄泉・機知ルートでは先の見えない不安、ホラー的怖さがありましたが、暗黒ルートではおおかみ側に回る楽しさ、加護の割当てやある程度の真相などがわかった上での知能バトルの熱さなどテイストの違った楽しみかたができてよかったです。

せっかくの人狼ゲームものでありループものであるからにはおおかみ側もやってみたいと思うのがプレイヤーの人情なので、そこをきっちりやってくれたのが嬉しいですよね。やるからには当然というところではあるのでしょうけど。ダンガンロンパ育ちなので、これロンパで見たかったや~つとなってしまいました。ワハハ。ロンパもキャラゲー的側面があるだけにいろいろなパターンが見たかったなあとなるゲームです。

 

最後の大団円も非常によく、本編のエンディングとしてはこれ以上ない満足でした。ループすることで得た情報と経験を活かして進んでいく物語りですから、最後に事件が始まる前にすべての謎を解き明かし、村民たちを説得する=「信じてもらう」という形でそれを締めたのが美しかったです。ループの中でのできごとがほとんどの人物の記憶から失われるとしてもこうしたかたちで活き、残り、彼らを救うという終わりの優しさには泣かされました。

宴において最終的な決定の要因となるのは、事実・合理性・妥当性などよりも「信じるか信じないか」、というのは暗黒ルートで特に強調された部分であり、ループで得た情報を使って人外の力を持つふりをし信じさせるというのも暗黒ルートでやっていたことなので、そういう前フリの丁寧さも良かった。

 

設定まわりに関しては非常に緻密で面白かったのですが、エクストラやめー子(他作品)関連を含めると蛇足感というか設定厨感というか風呂敷広げすぎというか、あまり私には合わなかったですね……。これ明らかに私が知らないことの話してるしそれわかってたら絶対楽しいじゃんって状況がつらすぎるオタクなので「これ単体でも楽しめます」は私にとってはだいたい嘘なんですよね。

クトゥルフもわからないのでエクストラ読めば読むほど冷めたみたいなところもあって、ついていけなくてつらかったです。本編では日本神話とか丁寧すぎなくらい説明してくれてたんだからクトゥルフももうちょっと解説してくれてもいいんじゃないかなとは思う。

エクストラはおまけなので、実際蛇足だったとしても読まなかったことにしてしまってもいい気はするのですが、しかし本編のけっこう肝心な部分で(暗転のシーン)他作品の文脈でなんかやってしまってるのは明確にちょっとどうなのかなあと思いました。ああいうことをするならちゃんと続編にでもしたらいいのではないでしょうか。ときにコントローラブルでときにアンコントローラブルな幼児という宴の不確定要素としてのめー子は良かったのですが、めー子の存在そのものはあまり好きではないです。

 

そういった合わない部分もあったのですが、総合的に言えばとてもおもしろかったですし、好きな部分も多く、加点方式で評価したいタイプの作品でした。私の好きなやつだいたいそんな感じ。気が向いたらデスマッチラブコメもやってみたいかなと思います。