ひっつきむし(独断と偏見による)

だいたいゲームの感想です

「アンジェリーク ルミナライズ」の感想②(ミラン・ユエ・ロレンツォ)

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のんびり進めております、アンジェリークルミナライズ。今回はミラン、ユエ、ロレンツォを攻略してみました。以下ネタバレ。

 

 

ミラン

全然年上っぽくない年上キャラ。体験版始めてからちゃんと公式を見たので、年齢26歳で三度見くらいしてしまいました。てっきり二十歳くらいかと……。年下キャラたちではそこまで年下要素を大きく推してこない印象ですし、幼さや純粋さではこの人がぶっちぎりっぽいですね。ちょっとずらした感じが面白かったかも。

フェリクスでも子供の頃に守護聖になったので世界が狭いよみたいな話があったのですが、ミランはそれ以前から普通ではない暮らしをしてきていて対人関係がだいぶ独特な人、という設定でしたね。雑にまとめると。なんだかテンポがズレていたり距離感がおかしかったり、言ってくることも何かと甘ったるい感じだったりといきなりこれは困らんか? と思ったらアンジュさんもおおむね引いていて面白かったです。

 

この人の面白いのは、基本的に本人としては大真面目なところなんですよね。一見かなり軽薄に見えるので、ふざけたりからかったりしているようでも、たいていは特にそんなつもりはないどころかごく真剣なのだとわかると急にかわいくなってくるのがずるい。水晶玉など、特に一人で考えごとをしているような場面だと真面目にいろいろ考えているのが伝わって好印象でした。

年上男性であの言動、でちょっと警戒させておいてからのピュアっぷりの開示はうまいですよね。下心があるとかないとかのくだりもありますが、あれにしたって素直な好意の発散なのが怒れなくてずるいんですよね。基本的に悪意がないので責めづらくてずるい。ずる男。かわいければ許されると思っているに違いありません(偏見)。

 

「守護聖は神様みたいなもの」という表現は各所に出てきますが、ミランはそこの要素をピックアップしたシナリオだったかなと思います。神様というか天使なのですが。ミランの純粋性は人外、神や天使のそれであり、恋をして人間になることで純粋さが薄まりもすれば人外の能力も失うというお話。これが比喩などではなくほぼそのまんま事実なのがやたらファンタジックでこれがアンジェリーク……と思いました。ペガサスとかおるしガチで神話なんよ世界観が。

ここではストレートに「堕天」ということばが使われるのですが、これはかなりネガティブなイメージの伴う単語ですし、ミランも最初そうなることを恐れます。恋とは(ここでは)欲望することです。相手を欲することであり、それは当初のミランにはない感情です。

 

もちろん恋すること、欲を持つことが何か悪いわけではありません、という話にしっかり緑の守護聖として象徴するものが絡んでくるのがよかったです。そのあたりは作中で言っているのでダラダラ書くことでもないのですが、人間の欲望を肯定的に見るのは個人的に好きなやつですし、豊かさ=欲=恋と綺麗につながってくるのはやっぱりグッときますね。

得ることと失うこと、与えることと与えられることはわりと全体に通底する要素かなと思うのですが、ミランのシナリオではそこも「緑」の特性によく絡んでいて面白かったです。自分が満たされているからこそ相手を本当に満たすことができる、だから欲を知り、愛する人と結ばれたことは緑の守護聖としてのより望ましい成長なのだ、と綺麗にまとまるのがよかった。

「豊かさ」を象徴する守護聖の物語なのでこういうテーマになっているのでしょうけど、「与える」ことはすべての守護聖の仕事でもありますし、言っていることとしてはごく普遍的で共感しやすい、心に響くものだったと思います。いいこと言ってんな〜の気持ちでスクショめっちゃ撮りましたね。ひとつひとつの台詞にいいなと感じるものも多かったですし、好きなテキストでした。

 

 

ユエ

メインヒーローですね。ビジュアルはドのつく王道王子様キャラなのですが、見た目からはちょっと捻った感じもありつつなんだかんだで見た目の印象通りだったかも、というところに帰着する人物造形だった気がします。見た目があまりにも王子様なので第一声で驚き、攻略していて人となりを知ってきたところに出自に驚きでしたね。

まさかの一般市民、それも物理的に暗くて寒い、人も少ない場所の出身なのはユエというキャラクターの一番おいしいところだなと思います。どう見ても(見た目に限らず)元々王族とか、そうでなくても生まれながらに上流階級なのだろうと思わせられるのに全然そんなことないという。故郷や周囲の環境は悪いものではなかった、むしろ周りに恵まれていたことはうかがえるのですが、それにしたってそこからこの曇りなき精神の育ちがよさそうすぎる人間が生まれてくるかと言えば意外なわけで。

そのまんま作中で言われているので改めて書くことでもないですが、ユエは言動が雑だろうがなんだろうが、本質的にノブレスオブリージュを地で行く高貴の人です。ごく当たり前のものとして守護聖/上に立つ者/与える側の人間としてすべきことをすべきこととして受け止め、考え、実行できる人で、ここは他とは一線を画する部分だと感じました。恋人観が現代的だったり自立心が高かったりするところもポイント高いですし、あの高貴の人マインドをおそらく持って生まれたとしか言いようがないのはまさに光の守護聖の才能なのでしょうね。光の守護聖はこいつしかいないという説得力がある。

 

シナリオ的には特になにかすごい問題が起きたりとかトラウマを解決するみたいな話ではなく、ただただ互いを知り惹かれあっていくだけと言えばだけなのですが、こういう人なのでそれが当然だろうと思えるのがまた面白いですよね。もちろんユエの人となりがどうだろうと解決すべきアクシデントを設置することはできますが、このゲームの攻略シナリオの作り方的にないんじゃないかなと感じられるところが好きです。

各シナリオ並べてみると、重たい展開があってもそれは各人の抱える課題を解決して共に前に進むために必要な過程であって、ユエには特にそんなもんないので当然そんな激重展開にはならないのが自明なのですよね。それでいてしっかり面白いのがえらいところ。

もちろん何も葛藤がないかと言えばそんなことはなくて、ユエさんなりには守護聖と女王候補でありながら恋をすることの悩みが持ち上がるのですが、それにしたって自力で消化してくるのでそう重い展開にならないんですね。あと悩んでる姿がアホかわいいので受ける印象として重たさがない。石で占いすな。すぐムキになるな。かわいいね。

こちらからしてあげるべきことが基本的にない人/シナリオなので、そういう意味ではやや薄味かもなとは思いますが、そういう部分すら魅力に還元されるのがよくできたキャラクターだと思いました。特別なできごとがなくても、お互いすべき仕事をしている姿に惹かれるというのは職業意識の高さから納得がいくのもよいですね。

 

そういう意識が高い、真面目な人と言ってなんら間違いはないのですが、一方でアホっぽかったり子供っぽかったりする(むしろ逆ですが)のがかわいくてよかったです。アホと見せかけて全然アホじゃないと見せかけてやっぱけっこうアホ、みたいな印象の変化がある。

ことばにいい意味で飾り気がなく、好きとかありがとうとか、気持ちをストレートに伝えてくれるところも光属性という感じで好きでした。守護聖たちみんな、しっかりそれぞれの属性から立脚したキャラ作りになっていますが、ユエはことさら光属性を感じるキャラだった気がします。

 

ロレンツォ

最年長年上大人の色気みたいなやつあんまり興味がないなと思っていたのですが(ショタコンなのでシンプルに好みと正反対)、言動ふくめとっつきにくさを感じていたからこそ終盤の展開が響くキャラでした。意外とかわいいところがあると言いますか。好みに関わらず序盤なんだこいつ……となる言動自体はミランともども狙ってると思いますが。

守護聖たちの司る属性、彼らおのおのがそれを強く持っていることについて、この作品がそれを必ずしも肯定的に、あるいはよいもの、善良なもの、有益なものとしてポジティブに描かないのが好きなのですが、ロレンツォはそのあたりが強く出ているキャラクターでしたね。

 

ロレンツォは好奇心の人で、確かに地の守護聖にふさわしい人物ではありますが、同時に知識欲に全てが振り向けられてしまっている分、ほかの部分が欠けた精神の持ち主でもあります。多くの人のようには人間を愛せず、その性癖によって親友を陥れてしまった過去があったり、彼自身も自分のありように苦しめられているところ、それを半ば諦めてしまっているような雰囲気は切ないものがありました。

アンジュに惹かれているけれども、いつかは彼女に飽きてしまうだろう未来が恐ろしい、というくだりとか、「愛してみたい」とかすごく好きでしたね。こんな顔して臆病で脆いところがあるのはずるい。個人的にギャップに弱いのと、強い人よりは弱い人の方が好きだったりもして、後半はなんだよ……萌えるじゃねえか……(腕組み)みたいなテンションになってしまいました。

 

けれども、おそらくはあくまで根っからこうした人物なのであって、どうしようもない部分がある以上、そこを踏まえて恋愛していかなければならないわけですね。普通にやっていたら歴代彼女のようにそのうち飽きられて終わってしまうだろうわけで。

そこでこの難物をどうするかと言えばこっちが御してやるんだよという展開になるのが好きなところでした。ああいうの好きなんですよねえ。自分より上位の人間にならどうたらとか、そもそもこちとら女王候補やぞ! 舐めてんとちゃうぞ! とワクワクしてしまった。アンジュさん見くびってんとちゃうぞ。あと年下優位のカプって萌えるよね。

 

そういう上下がどうこうの話で言えば、ロレンツォはわりと明確に最良>他エンドのキャラだったかなと思います。「私は君のもの」と「君は私のもの」ですからね。告白エンドを先に見てそこは逆じゃない!? と思ったので、最良の「私は君のもの」でドヤ顔ですよ。

最良が一番良いというか、ロレンツォのキャラクター、ストーリー的には彼に惚れるのではなく惚れさせるのが勝ちであり、女王の座と恋人を両取りするのが勝ちなのでしょうね。全てを掴み、彼の上に立てる人物であればこそ、より強く彼の心を掴むことができるのでしょう。

 

くっついたらくっついたでわりとウキウキしだすのもかわいかったですね。数々の歯が浮くような台詞を素で言ってたっぽいな……と思うと全体的にかわいく見えてくるのがいいところ。「私の宇宙」は壮大すぎて笑ってしまうのですが、宇宙の女王が恋人なわけだから何も間違っていないのかもしれなくて二重におもろい。アンジェリーク、恋愛の規模が壮大。