「ZERO ESCAPE」シリーズの感想

ZERO ESCAPEシリーズをPS4版にてプレイしました。このシリーズは三部作で、脱出ゲーム+テキストADVの形式になっています。三作とも意表をつく展開で面白かったのですが、単純にサスペンスあるいはミステリと思って挑むとジャンル的に面喰らうかも。

私は脱出ゲームのたぐいはまったく得意ではありませんが、程よい難易度で楽しく遊べました。本当に得意ではないので何度か攻略サイトのお世話になりましたけれども…。特に筋金入りの立体苦手マンなので、善デスのサイコロのやつとかマジで無理でした。中高の数学のトラウマが蘇った。攻略サイト様様です。

追記から各作品ネタバレありでざっくり感想メモです。

 


9時間9人9の扉

初出はDSということで、これ元は二画面を活かした形だったんだろうなーとわかる演出・システムがちらほら。上下二画面をうまく使っているゲームはよいものです。

ネタの根幹となるシステムもそうですよね。一見何の意味があるのかわからなかったものが種明かしでカチッとピースがハマる快感。謎のシステムと微妙に違和感のある三人称体はそういうことだったのか、とわかった瞬間は本当に気持ちよかったです。そこがまずよかったところ。

テキストのノリは古いというか、当時にしてもおっさんくさい下ネタが多くてうんざりさせられる部分はありましたね…。三作全てに言えることですが。善デスとかましてや老体のシグマさんが若い子にしょぼい下ネタ吐き散らかしてるのどう見えてたんだろうと思うとつらすぎる。(見た目が)若けりゃ許されるってことではないですけどね。

あとはキャラの掘り下げの弱さが残念な感じだったので、後半二作はみんな生い立ちペラペラ喋ってくれてよかったなと思いました。クライマックスで急に生い立ち開陳とか悪役にも悲しい過去などはしばしば批判されますが、やっぱりないよりはあったほうがいいよ生い立ち。


セールで買ったゲームあるあるで一切内容を確認していなかったのもあり、SF展開になってきたときは驚きましたが、形態形成場の設定は独特でワクワクできてよかったですね。未来と過去を同時に改変するとか茜の生存・存在という揺らぎの話とか、ややこしいながらもそのややこしさが面白いところだったので、善デス以降SHIFTの登場でシンプルというかベタ化してしまったのが残念といえば残念。

複数のルート分岐と他のルートで得た情報で先に進む展開はADVにはよくありますが、そうした現実のゲームシステムとうまく絡んでいるのが秀逸です。プレイヤーとほぼ同じ視点で全体を俯瞰しつつもメタフィクション的にならないのがうまいですよね。メタはメタで好きですが。

こうしたサプライズのある作品はある種一発ネタ的なところがありますが、しっかり設定を構築して二作目三作目につなげていったのは好みです。逆に999も善デスも全然すっきりは終わりませんけど…。

 
ところでこの作品での計画、茜の復活(の確定)の部分はまあいいとしても、復讐の部分がのちのち全く触れられないのが気になりました。確かに直接手は下していませんが、かなりエグい手口ですしノータッチで進めていいこととは思えません。そういう部分も合わなかったかな。復讐だから正統性が〜とか現代社会が舞台でそれはないしな…。どうせなら一宮は自分らで殺しとけ、直接やるのが嫌なだけちゃうんかと思ってしまいます。私としては。

いずれにせよごく個人的な理由でここでのノナリーゲームを行った茜(とサンタ)が善デス以降は単に世界を救うために行動しているキャラになったのはわりと違和感ありますね。つながりが感じられないというか。なんでそこまで頑張って人類救いたいのかもわからないし。根本的には自分が死にたくない、あるいは大切な人に死んでほしくないということならつながってるとは言えるでしょうか。まあその辺本人が言ってくれないのでなんとも…。

とはいえ諸々ひっくるめても、茜のおとなしそうな顔してやべー女なところ、そういうズレていたり冷徹で振り切れた面のある一方で、一貫して淳平を一途に想っているところは好きです。その性格で苦労していたところを淳平に救われたから好き、というのも綺麗につながっていていい。その上で最終的には個人的感情に振り回されないのがクールです。後発二作ではさらに大暴れでニコニコしてしまいました。シリーズの軸たるキャラとしてよい存在感だったなと思います。

 

 

善人シボウデス

ゲームとしてはシナリオも脱出パートも正当進化という感じの良作ですね。グラフィックはつらい感じでしたが…。ルナエンドの横顔スチル(と呼びたくない静止画)とか四葉とかつらすぎる。四葉、眉全隠れで目ひんむいてて口がデフォルトで笑ってるのが怖いんですよね。老人キャラはそこまで悪くはないですが(相対的な話)。


999も短いとは感じませんでしたがテキストのボリュームがかなり膨大で、ルート分岐のバリエーションに富んでいるのがよかったです。チャートの横幅すごいですよね。分岐によって振る舞いをかなり変えるキャラ、あまり変えないキャラがいて、そういう面でも各人の個性を感じられました。

ABゲームのおかげで主人公のシグマ含めほぼ全員裏切りカス化するのも好みなところでした。アリスとかKめちゃくちゃ煽るじゃん。唯一の例外のルナもただ単に聖人キャラというわけではなく、協力の選択しかしない理由が納得いくものでよかったです。ルナエンドいいよね。ジレンマまでやってみるとここでのシグマとルナの関係性って複雑骨折してて好きです。クォークは知らん…出番ないし…。

クォーク、釘宮さんのショタキャラでめちゃくちゃ期待したので、出番はないし脱出パートには絡まないしキャラは薄いしでかなりがっかりしてしまいました。他キャラと同等の扱いをしてほしかったです。私がショタコンとか関係なくメインキャラと思ったらアレは拍子抜けすぎ。単なる天明寺の付属パーツにとどまってしまった印象です。シグマとの一対一の絡みないですよね? その天明寺との関係は今作で一番好きなんですけれども。

 
天明寺淳平さん、めちゃくちゃ仰々しい苗字を引っ提げてカムバックしてきたので正体わかったときちょっと笑ってしまいました。そういや苗字不明でしたね、という。ジレンマで天明寺呼ばわりされるたびにニヤニヤしてしまった。しかし年取ったからってジジ口調にならないでほしい。

茜を探しながら半世紀生きてきて、茜に会うためならなんでもするという感じの人ですが、作中でのクォークへの愛情と献身、最後の茜と別れてクォークと生きる選択がとてもよかった。ジレンマで明かされた真相もあり、茜しかない人生なのであれば虚しく物悲しい印象になっていたと思いますが、生きる中で茜と同じくらい大切な存在を見つけられたことの健全さと幸福さと言ったら。二人めっちゃ明るくて仲いいですしね。なんというかホッとしました。

一貫して判断基準がクォーク>自分であり、一生かけて求めた茜よりも今目の前にいるクォークを優先できるのが非常に好印象です。ゲームにもクォークの希望がなければ参加しなかったのでしょうし。このあたりを思うと無限に涙が出てしまう。よかったなあ。大切な人を真っ当に大切にできることは素晴らしいなと月並みながら思います。メロンソーダのエピソードがベタながら良い。

 
その茜については善デス時点では変わってしまった、もう前の茜ではない何かだ、という結論にそこまで疑問はなかったので、ジレンマやって指輪の件で気持ちがめちゃくちゃになってしまいました。ずっと右手の薬指につけたまま生きてきたのも、淳平に対してそんな感情をおくびにも出さなかったのもいっぱいつらいよ。何なの。

最終的に淳平と共に生きる選択肢があったにも関わらず(二人は今も変わらず想いあっているのだから)それをしなかったのは覚悟が感じられて良い…のですが、別に今から一緒に生きたってよくな〜い!? 指輪はめ直してもらいなよ!(大の字) これだから私のことなどどうか忘れてくださいタイプは。思ったらLemon度高い気がするこのカップル。

でも茜さん、AB計画においてはすごいスケールでめちゃくちゃなことやってるので好きです。声が沢城さんからの榊原さんだしつよい。デスゲームを二度主催する女。復讐がうんぬんと書きましたが、この辺の規模感とぶっ飛びぶりのせいでみんな忘れてるだけな気もしてきました。

そういえばサンタのこと一切話に出てこなかったけど死んでるのかな…。ジレンマ時点では一緒に行動しているようですが、サンタってポジションのわりにそこまで目立たないですよね。全面的に妹に喰われている。というかクラシキーズはちょっと笑っちゃいました、秘密結社がそんなに主張強くて大丈夫?

 
今作はストーリーとしては999に比べて予想しやすいところに収まった印象です。というか999が一発しか使えないネタの塊なので、その上に作られた続編としては申し分ない作品だと思います。形態形成場の設定とか、999と違ってプレイヤーは理解してるわけですし。

SHIFT能力を用いることで999とはややずらした理屈になっていますが、何らかの並行世界の結末を知ることができる能力が存在していることはプレイヤー的に疑いようもないわけで、そこに999並のサプライズを作ることは無理でしょう。ということでなのか、もうその辺はほぼプレイヤーがわかってる前提の(シグマは終盤に知ることになりますが)開き直った作りになっていて面白かったです。パスワード集め、ガチでメモしないといけないとは思ってなくて最後のほう慌てて回り直しましたが…。アホな話ですが、チャート上でパスワードがあるEDがわかりやすくなっていたのはアホ的に好印象でした。優しいね。

 
伏線回収みたいな話で言うと、Kの子供時代の回想絵でパワードスーツ着てたのが伏線だったのは笑いましたね。顔わかんないから仮のビジュアル当ててんのかな、これ伏線だったらオモロだなと思ったんですがマジに伏線でダメでした。シグマにボイスがなく、絶対に顔が映らないのでKの顔自体は察するものがあったのですが、まさかあんなシュールな絵面が物語の根幹の設定にまで関わる伏線だとは。いろいろな意味でお見事でした。

ディオEDや天明寺EDでこれ地球じゃないオチあるかな~とはちらっと思ったのですが、ラジカル6の時間間隔や重力との関係性あたりとはまったく考えが結びつかず、そのあたりの種明かしに際してはただただなるほどなーと頷くばかりになっておりました。時空移動とか地球じゃないとかクローンとか大ネタそのものはそこまで捻っていない印象なのですが、細かいところの理屈づけが意外性もありやはり上手いですよね。

 
ストーリーとしては一件落着しつつクリフハンガーというか俺たちの戦いはこれからだというか、あからさまな続編ありきのもので、当時のプレイヤーだったらちょっと印象よくなかったかもしれないなあとは思いました。ジレンマ出るまでに数年かかってるし。

というかそういった終わり方はまだいいにしても、ファイが何者かが明かされずに終わったのはちょっとどうかと思いました。ジレンマでわかったからいいとかいう話ではなく、他のキャラは正体や生い立ちを明らかにして各自のEDとしているのにファイEDだけ彼女の名を冠しておいて何もわからないのは素直に受け入れがたいですし、メインヒロインの正体がわからないままでここでの話は一応終わってんだからいいじゃんとは言えないですね。

でもそれはそれとしてジレンマの彼女周辺の話は好きです。そういうところがあるので余計に文句も言いたくなるんだなこのシリーズ…。

 

刻のジレンマ

シリーズ最終作。このゲームの時系列がバラバラになっているという特徴を知り、やりたくなって999からプレイしたのでした。

幾重にも分岐する並行世界・記憶消去・ランダムなチャプターの提示の三要素によって、縦にも横にも全く時系列のつながりが不明になってしまうというのは期待通り面白いプレイ感でした。最終的に真の分岐と時系列が明らかになり、なるほどこちらでこれがあったからあちらでこうなって…と頭の中でつながっていくのは非常に気持ちよかったです。

強いて言うとその試みによって通時的なストーリーがわりと犠牲になってしまっていたのは残念な気もしますが、そのへんは痛し痒しですかね。そうした意識が当人たちになくてもすべてが積み重ねになっている、というのはシリーズ共通のところでもありますし。

分岐関係で詰まったのは同じ選択を繰り返さなければいけない部分(ダイス)と、最初の投票での分岐でした。それぞれのチームが処刑される分岐を作らなければいけないというのは気付いてみればそりゃそうだという感じではあるのですが、これがなかなか思いつかなかったんですよね…。ダイスも解説には納得したのですが、全く同じ失敗を繰り返すっていうのはゲーム的に選択肢としてなかなか頭に出てきませんでしたね。これはヒントくらいあってもよかったかも?

 

グラフィックに関しては、3Dモデルそのものはイラストの再現度も高く綺麗なのですが(キャラデザ素敵です。女子の服装好き)、からのモーションのモッサリぶりでずっこけてしまいました。女子かわいいし塗りの再現なんか完璧なのに、モーキャプ入れてないよねどころじゃない不自然っぷり。渋すぎる。

あとなんか間の取り方が常に冗長というか、映像作品の台詞のテンポではないですね。立ち絵式のADVとムービー方式の悪いところ取り感。せっかくシリアスで面白いストーリーで声優さんの演技も素晴らしいのに、よくできているとは言えない人形劇が延々流れるのであまり入り込めなかったのが残念でした。

 

話としてはツッコミどころはやはりQ関係のノーヒントぶり、今まで散々やってきたSHIFTに対して最後で急に躊躇するあたりなどありますが、全体的には面白かったですね。先述した通りあまりのめり込めなかったので、どうしてもテンション低めにはなってしまうのですが。

新キャラ関係ではカルロスとダイアナが好きです。カルロスは謎の事情でなんか揉めてるカップルと監禁されてもめげずに話しかけたり、要所では逆に空気読んで引いたりするあたりコミュ強かついいやつで尊敬してしまいますね。消防士という職業と性格の結びつきに説得力があるところが好き。彼らを救うために最悪の事態を引き起こす一因となってしまう展開も好きです。

ダイアナはカルロスとは逆で、単なるいい人におさまらない部分が魅力的ですよね。カルロスだってあの状況になってたら腐ったかもしれないけど。あれは耐えられるシグマさんが異常(理由はしっかりしてますが)なので…。ともかく普通に弱いところ、からの立ち直れる強さが良いキャラクターですね。能登さんの演技も素晴らしかったです。じっと聞いているのがつらかったと褒めたい。

彼女とシグマさんのロマンスが今作で一番好きなところかもしれませんね。延々とふたりで閉じ込められていればある種当然の流れではあるのでしょうが、かと言ってなし崩し的にではなく、しっかり愛し合って結ばれるところがよかったです。シグマさんの株爆上げでした。えらい。それと「忘れるはずがない」のトロフィー通知では思わず涙が出てしまいました。それまではふーんと思いながら見てたんですけどね。ああいう演出に弱い。勝てない。

 

とはいえ肝心のラスボス関係が唐突というか弱い感じがしたのは残念でした。善デスのディオもそうなのですが、設定としてはきちんと説明されていますし理解もできるものの感情移入できないんですよね。へえそうなんだ、と思って終わってしまいました。善デスから宗教組織のことなど布石を置いていたわりにそこがフワッとしてたのも原因かも。私の好みの話かもしれませんが、敵キャラのことをもっと掘り下げてほしかったですね。シリーズ全般。

彼は生まれてくるだけのことにもあれだけの物語を持っていて、ファイたちにもおそらくとても複雑で大きな感情があり、これまでの人生いろいろなことがあったに違いないのに、それを表面的に撫でるような扱いで終わってしまったのはがっかりしてしまいました。ここまで三作かけてしてきたことの終着点である人物に入り込めなかったのは不満です。「Q」の仕掛けのためでもあるのかもしれませんが、結局それもかなりアンフェアかつプレイヤーからすれば「で?」という感じのものになっていますし、そのために犠牲になったものがあるのだとすれば残念ですね。

 

 

脱出ゲームとして、また時空転移や並行世界を扱うADVとしてはとても面白く、好きだと言える部分も多いからこそモヤッとするところが残ってしまうようなシリーズでした。好きは好きですが…という感じ。個人的にはゲーム部分がちょっとダメでも物語がよければいいタイプなので、そういう意味では好みと真逆だったかもしれません。

ストーリーもよかったところは最高によかったのですが、そう感じられないところも目立ちました。加点方式でならいいけれど、というタイプかな。そういった印象なので、合う合わないがあるシリーズかなあと思います。

ジレンマの後日談はテキストのみでアッサリしたものですが、特にこれまで見守り続けてきた茜と淳平のハッピーエンドっぷりには感慨深いものがありましたし、なんだかんだと書きましたが最後にはここまでプレイしてよかったと思えるシリーズでした。