ひっつきむし(独断と偏見による)

だいたいゲームの感想です

「オーディンスフィア レイヴスラシル」の感想

オーディンスフィア レイヴスラシル 新価格版 - PS4

オーディンスフィア レイヴスラシル 新価格版 - PS4

  • 発売日: 2019/03/14
  • メディア: Video Game

オーディンスフィアレイヴスラシルをプレイしました。同メーカーの十三機兵防衛圏がよかったのがだいたいの購買動機なのですが、元はけっこう古いゲームながら素晴らしいグラフィック、のめり込めるシナリオは期待通りでしたし、ADV+タワーディフェンスだった十三機兵とはジャンルが違うのでどういう感じかわからなかったゲーム部分もサクサク楽しくかつ手応えのあるプレイ感でとても楽しかったです。

2Dアクションゲームというとパペッティアぶりにまともにやったような気もするのですが(もう7年前で怖い)、個人的にプレイしたものだとテイルズオブハーツ(リメイク前)が感覚的に近かったかもしれません。あの軽い操作感と敵をうまいことお手玉できると楽しい感じがなんとなく。とはいえ普通に同社の朧村正あたりが近いらしいのでそのあたりもやりたいですね。

ストーリーは5人の主人公それぞれのパート+最終章に分かれており、ひとりひとりの物語としても全体の大きな物語としても楽しめてよかったです。他キャラのパートもプレイすることで話が100%理解できるようになるような情報の構成はやはり十三機兵のところだなあと思いました。どっちかというと逆ですが。

トゥルーエンドまでには80時間近くかかったなかなかの大ボリューム作なのですが、全体が6パートに分かれ、一人の主人公のパートが8章に分かれ、章内でも長くて数分程度のステージに細かく分かれているので気持ち的にはサクサクプレイできるところも好きでした。いい意味でガッツリやっている感覚がなく、気がついたら最後の方まで来ていたという印象です。やめどきを決めやすいのもよかった。

以下ネタバレ感想です。

  

グウェンドリン

プレイ感覚は最もスタンダードでライト。入り口となるキャラクターらしい感触でした。グウェンドリンは青い鳥で表されますが、モチーフ的にはバレリーナ、それも白鳥の湖のオデットですよね〜と思ったら特典資料にそう書いてありましたね。しかしオデットは他にいるという。等身絵だと意外とそんな感じでもないですが、デフォルメでは腰の翼がチュチュのように見えるのがかわいらしくてお気に入りです。フォゾン吸収モーションの立ち姿が美しい。

本作はどいつもこいつも恋しやがってという感じではありますが(そこが好きです)、グウェンドリン編は5編の中では最もその恋愛を中心に置いた部類のストーリーと言えるでしょう。基本的にはグウェンドリンの恋愛と変化を追うものであり、他の人物や世界に与えた影響とは裏腹にごく個人的な物語にまとまっている(情報を伏せ、意識的にそう見せている)のが面白いところです。あとから振り返って考えてみるといろいろ楽しいですね。

どれだけ父親を愛して尽くしてもろくろく報われなかったグウェンドリンが、逆にオズワルドが自分への愛のために命を賭しすらしたことに端を発して彼に心を動かされていく構図がよかったです。相手を愛しているから、そしてその人に愛されたいから献身するのだということ、その想い、切実さを彼女は知っています。なぜオズワルドがそんなに自分を愛しているのか/愛を欲しがるのか、それはわからないけれど、それでもその必死さを彼女はわかるのだと思いました。

そして自分をそんなにも愛して、魔法で自分を手に入れたいきさつにもかかわらず、どこまでも優しくしてくれる人に惹かれないでいられるかと言うと難しい。ラグナネイブルの伝統的価値観は非常に男尊女卑的です。あの国では女はまるきり物で、グウェンドリンもその価値観に従って生きてきましたし(嫁がされるワルキューレへの無気力なコメントが印象的)、魔法で男に所有される結末を迎えました。それなのにオズワルドは、誰にも絶対に物扱いなんてさせないと誓うんですよ。そりゃ好きになるわ。好きにならんわけがない。

そうしてオズワルドに愛され、また愛することで、自分は物ではなく人であるということ、人としての尊厳を取り戻し、オニキスに「自分は物ではない」「私の夫を侮辱するな」と言い放つ流れは本当に美しかったです。愛するということは相手を尊重するということなのですよね。決してただ欲しがるとか相手を自由にしたいと思うとかではない。そういうことを考えましたし、グウェンドリン編の最後はアツアツすぎてよかったね~と生あたたかい気持ちになりました。よかったね。苦労もあったことでしょうが末永く幸せに暮らしたようで何よりです。

とはいえグウェンドリン編だけだと結局オズワルドってなんなん? 魔法って何? みたいな感じですが、いざオズワルド編をやってみるとわけがわかってグウェンドリン編も100倍面白いし感動的、という作りがニクいですね。このあたりの情報の制限、二度目が楽しい感じは十三機兵っぽい。 

 

コルネリウス

コルネリウスは比較的スタンダードな手触りながらもちょっとクセがある感じ。小さくて動きが早いので、攻撃がやや当てにくい(狙いにくい)のですよね。上を狙わないといけないボス戦はしんどめでした。ドリルでゴリ押しできるので横ドリルと縦ドリル連発でどうにかしてしまいました。コルネリウスのドリルは天を衝くドリル。

でもかわいいのでオーケーです。プーカ姿愛らしすぎる。お腹吸いたい。耳をもぎもぎ触るモーションと滑空モーションがお気に入りです。アイテム獲得のモーションも好き。なんでしょうね、あの勇ましいのに勇ましいのがめちゃくちゃカワイイ感じは…。

お話は「呪われ王子の冒険」というタイトルの印象通りの王道冒険物語、貴種流離譚なおとぎ話という感じでした。コルネリウスのキャラ付けもストレートに人格者な王子様で、そういう意味ではあまり言いたいことがないですね。まっすぐで立派な人物で好感は高いのですが。王子という立場ある人としてちゃんとした考えを持っていますし(恋愛がからむとやや盲目気味だったりお人好しすぎたりはするけれど)、呪われようが国外追放されようが基本めげませんし、親父を説教するシーンがなどっこよくて好きです。

ベルベットとの恋模様は、そのものは最初と最後くらいなのですが、彼女を想い続けるコルネリウスを見ているとやっぱり最後は感慨深かったですね。十三機兵とこれしかまだやってないのですが、神谷さんってもしかしてウジウジ病んでる男に女がうるせー知らねーお前が好きだからそれで一切問題ね―する展開好きなんでしょうか? 私はわりと好きです。こっちが全然先なんですけど、オズワルドにしろ関ヶ原くんを感じたね。あと抱き合うモーションとかよくできててかわいいなと思いました。

しかし非常にできた人物なので、コンプリートエンドラストのベルベットを静止するくだりはやや言わされてる感があるというか食い違った印象かなあとは感じました。数千年あって今更迷うかなとも思いますし。いざそのときになってみないとわからないこともあるのでしょうけど。ともあれベルベットとお幸せに、という感じでした。

 

メルセデス

急にシューティングゲームになるな。慣れるまでは大変でしたが、通常攻撃にPOWゲージを使用しリロードしなければならないデメリットがある分ゴリ押しでも火力が高く、独特の操作感も慣れると楽しかったです。オズワルド編入って高速飛行できねーのかよこいつと思っちゃったもんな。他キャラもとても楽しいのですが、メルセデスは独自の要素が多い分、これで一本ゲーム作ってもいいのになと思いました。

メルセデス編は特に好きなストーリーでした。好きなんですよね成長物語。紆余曲折を経てなんにもできないわがまま王女様が立派な女王様になっていく姿、本当に感動しました。成長を感じた場面場面、特に演説シーンではめちゃくちゃ泣いてしまった。メルセデスを演じる能登さんがまた最高にいいのですよね。最初は浮世離れしたかわいらしい演技だったのが最後には凛々しい女性のそれになっていくグラデーションが素晴らしかったです。

それでいて成長したとは言ってもなお純粋でちょっと甘かったり、決戦やオーダインを前にすれば震えて涙が出てしまうような、そんなところも愛おしいですね。誰も急にそこまで変化することはできませんし、なにより恐怖や失敗を知っているから彼女は奮い立つことができたのだと思いますし、その姿には胸を打たれました。まだまだ幼いのに女王という重い立場にあらねばらないこと、つらい目に遭いながらも懸命に学び戦いながらあそこまで歩いてきたこと。「お前なんか…!」の演技が最高に良くて涙止まらなかったですね。

そんな彼女の成長に欠かせなかったのがカエルの王子様・イングヴェイの存在です。イングヴェイがあちこちお供して助けてくれなければこうはならなかった。しかし惹かれ合うふたりであっても、各々の目的を達するためには同じ道を歩くことはできませんでした。見ている側としてはなんでだよ恋愛も両取りしろやと思ってしまうのですが、それはそれとしてメルセデスに女王としての立場を迷いなく取らせるのはよかったですね。

イングヴェイと一緒にいたい、は当然あるのですが、そこでイングヴェイと一緒に行く系の選択肢が全く出てこないのがよかった。「待って」「あなたがいないと」であって「あなたと一緒に行く」ではない。女王としての立場を放り捨てるなんて、もはや無意識でもありえないということでしょう。恋の前に女王としての自分ありき。かっこいいな、大きくなったなと思いました(切なくもあるけれど)。「私、あなたがいないとうまくやっていけない」はキュンとしてしまう台詞でしたね。自分がいなくても大丈夫だと実感をこめて励ますイングヴェイもよかった。

しかし、しかしながらの悲恋なんですよね…。納得いかない。気持ちとしてはほんと納得いかないですよ。なんでこいつらだけこんな不憫な仕上がりやねんと。お話としてはべつに何か悪いわけではなくてバッチリ面白かったですし、二人の顛末も悲しいお話としては良いと思いますし、だからこそ気持ちが置いてけぼりになっちゃったみたいなところはあります。みんなに幸せになってほしいじゃん。

正規ルートはもちろんですが、メルセデスでダーコーヴァを倒したあとのイベントがやっぱりたまらなかったですね。泣く。「ずっと…好き…」でメルセデスの台詞が終わりますが、言おうとしたことは「ずっと好きだった」であるにしろ「ずっと好き」なのだなあと思いました。想いは永遠なのですよね。だから長い年月をかけてでも形を変じてでも、地の果てまで追いかけてでもイングヴェイに再び会うことができた。本来死の国へ行くことはない彼女がああして彼に再会できたというのは、やはり運命という以上に想いの強さを感じました。まああれでも他のカップルに比べたらどうなんとは思うのですが、ほんの少しでも救いがあったこと自体はよかったねと思いました。

 

オズワルド

操作感としてはバーサーカーモード:闇の力を解放する。相手は死ぬ。という感じでした。こんなにゴリ押せていいのか。もっとデメリットが必要だったのではないだろうか。動きはやや鈍めですが、バーサーカーモードが便利すぎるので全然関係ありませんでした。空間移動はこれどう使えばいいんだ…と思ったのですが、意外とボス戦で役に立ちますね(相手がデカくて飛び越えられないので)。待機モーションで闇の力を解放しだすのは笑ってしまいました。暇だからって右腕を疼かせるな。

お話は結局こいつって何者? なんでグウェンドリンのことそんなに好きなの? という疑問へのアンサー、グウェンドリン編の裏であり、グウェンドリン編同様、全体を俯瞰したときの重要度に反してごく個人的で内省的なものです。一人の孤独な男が(愛されるのではなく)愛することで幸せになろうとする物語であり、またオズワルドとグウェンドリンは互いに人として幸せになろうとする意思を目覚めさせる存在で、美しい構図、関係だなと思います。

自分の意志のない人生を送ってきたオズワルドが、操り手であったメルヴィンも妖精国での一応の立場も何もかも失い、さてどうするか、というのが物語の主なところでした。言いたいこととしては「人間は物ではない」ということなのでしょうが、であれば物ではなく人であるとは何か。それは自分の意志で選ぶこと、自由意志、能動性です。

オズワルドが初めて誰かの支配の外で何かをしようと思い、望んだ相手がグウェンドリンでした。オズワルド編ではグウェンドリンは最後まで目覚めませんが、ここでのお話ではそれで良いのだと思えるところが好きです。ここで大事なのは、結ばれることや愛されることではなく愛することだからです。

オズワルドが自分の意志で彼女を愛し大切にすると決めたことが重要なのであって、あそこから先はまた別のお話なのですよね。でも目覚めた彼女に打ちのめされたってかまわないとか意気込んだわりに指輪手放されたりしてクソ落ち込むオズワルドくんは好きです。そんなもんだよなと思います。がんばれ。あと好きなところと言えばオニキスとのポエムバトルがよかったです。オズワルドくんレスバ強いよね。オニキスと言えば、グウェンドリンをモノ扱いする一方で、本気も本気で彼女を愛しているところが難儀な人だなと思います。ダメなところがダメなところなのでオズワルドとは勝負にもならないのですが。

グウェンドリン編でのオズワルドは彼女に人としての意志、尊厳を取り戻させましたが、オズワルドにとっての彼女も全く同じ役割を果たしたこと、彼のそれまでの経験が彼自身と彼女を救ったことを知って泣いてしまいました。お話の構成的な美しさも良いですし、ふたりが互いにつらい経験をしながらも、それがあればこそ相手を尊重できたのだということが優しくて前向きでとても好きです。最後にメルヴィンに対してフォローがあったところもそんな印象。

そうしていろいろあった結果として、終焉~糸車でのオズワルドがそれまでと比較するに非常に明るく気力に溢れた印象になっているのがまたよかったです。絶対最初の頃じゃあんな生きなきゃ! 希望! みたいなこと言えなかったよね、よかったね、と思ってまた泣きました。ほんと幸せになれてよかったね…。そういえばコルネリウスとは従兄弟になるはずなのですが、ほぼほぼ絡みがないのがなんだか面白かったです。あのあと何かしらやりとりはあったんですかね。

 

ベルベット

鎖で敵を貫いたりぶん回したり放火したりと、他キャラに負けず劣らずのクセはありつつ遊んでいて楽しかったキャラクターでした。特に前後に何回も叩きつけるやつ(名前忘れた)はめちゃくちゃ使ってましたね。あれやっとけばいい感じある。ザコだいたい死んでくれるので…。

ベルベットはある意味もっとも主人公的な人物でした。物語の本筋に最も深く関わる主人公です。ということで、ベルベット編は他4人に比べて単独のお話としてはあまり思うところはなかったかな。こういう立ち位置のキャラあるあるという印象です。あっちへ行ってはお祖父様の尻を拭い、こっちへ行っては父親の尻を拭い妹を心配しイングヴェイあいつ何やっとんねんとなる身内に振り回されガールで不憫でした。みんな大陸中を回るシナリオですが、一番東奔西走してる感があったな…。せめてカレピが超いい人でよかった。

キャラクターとしてはクールでミステリアスな見た目や序盤での印象を裏切る苦労人っぷりと気丈さ懸命さがなんとも抱きしめたくなってしまうような人でした。だいたいは労いたいという意味で。話し方などどこか弱々しい印象もあり、繰り返し繰り返し苦難に襲われ、ときには折れそうになりつつも恐ろしい相手や己の運命に立ち向かい続ける姿には心を打たれました。いつも気を張ってがんばっているところを見ていたので、イングヴェイと共に倒れるシーンでの最も素が出ていたのだろう話し方にも泣けましたね。

最後はそうして長い間苦労してきた彼女が真っ当に報われる終わり方でホッとしました。ベルベットは真っ当に努力し、真っ当に報われること、永遠の命よりも限りある生を謳歌することを望むような人物でとても好ましいと思います。プーカの姿もかわいらしくてよかったですね。

 

イングヴェイ

ある意味一番嫌いです。好きだからこそめちゃくちゃ腹立つという意味で。腹立つキャラも多い作品でしたが、イングヴェイに関しては好きだからこそ余計腹に据えかねるパターンですね。もうほんとなんなのこの子。

イングヴェイは作中のいろいろなところで自分の目的のために暗躍していますが、けっこう感情に従って行動するような面もあります。オーダイン関係しかりメルセデス関係しかり。メルセデスをわざわざ雪山やらタイタニアやら行って助けたのも、あんな態度してほぼほぼ気になる女子だから以上でも以下でもなさそうなところがかわいいですね(キスを要求するだけならあそこまではしなくていいと思います)。

妹の恋人にほぼ絶対解けない呪いをかけておいて自分は少女漫画かおとぎ話みたいな恋愛エンジョイしてんじゃねーよという感じではあるのですが(コルネリウス排除自体にはちゃんと目的はありましたが…)、自分がそうやって恋したからこそコルネリウス編ラストでベルベットを助ける役目を譲ったようにも思えるのが憎めないところです。グウェンドリンなどもそうなのですが、他人に自分を見るときというのはやはり何か感じ入るものがあるのでしょうね。自分の身をなげうってでも相手を助けたいというような恋というもの。

しかし何をやっても裏目の男ですよねイングヴェイ。利用されたりタイミングが悪かったり生い立ちだったりいろいろ不幸な人だとは思いますが、わりと性格が原因っぽい部分もあるのが救えないところです。悲観的でひねくれた人物に見えますが、どうも根はむしろ楽観的で純粋なのじゃないかと思います。オーダインの件にせよ自分が命を張ることにせよ、もろもろ行動の結果が真っ当に反映されることを常に期待している、そうなるだろうと思っているように感じました。何度も裏切られ倒しているのに無邪気というか愚かというかお育ちが良さそうというか(当然良いのでしょうが)。幸せだった頃はあんな感じじゃなかったタイプなんでしょうね。きっととてもまっすぐな子供だったに違いない。知らんけど。

一番アホかよと思うのがこんな自分じゃメルセデスにふさわしくないみたいなところですね。もう本当にアホかと。メルセデスなめんなよお前自分が惚れた女をなめんなという気持ちになりました。だいたいそんなもんふさわしくない側が決めることじゃないですからね、メルセデスが決めることだし絶対気にしないと思います。イングヴェイがどんな過去や秘密を持っていたとしても、そういうものから開放された関係においてお互い惹かれ合ったのだからんなもん関係あるかと。もうほんと愚か。

最後の最後では、死後ああいう形ではありますがメルセデスと再会できてよかったですね。メルセデスの項でも書きましたが…。とはいえ不憫すぎるのでもっと報われてほしかったというのが本当のところ。翻すようですが気持ち的にはやっぱりそうです。そういう意味ではモヤつく作品だったかもしれません。めちゃくちゃ面白かったし好きなんですけどね。みんなに幸せになってほしかったです。