「グノーシア」の感想
Switch版をプレイしました。もはや言わずと知れた名作ですね。やろうやろうと思っていたのをようやくやりました。
SF人狼系ループADVとでも言えばいいのでしょうか。ベースは人狼ゲームですが、いろいろとビデオゲーム的な概念が組み込まれていたり、どんな展開でも主人公が死ねばラウンド終了だったりとアレンジされた部分も多くあります。
1プレイは長くて15分程度とサクサク気軽で、私は130ループほどでクリアできました。
130回と言うとかなり多く感じられますが、シンプルに何度でも繰り返し遊べる面白さ、個性的で魅力的なキャラクターたち、縦軸のストーリーの吸引力、豊富なサブイベントや各キャラ特定の役職での演出などの存在で飽きが来にくくよかったです。
また主人公の育成の概念があり、ループごとに他キャラの信用を勝ち取りやすくなったり狙われにくくなったりする各ステータスの成長や、ゲームを有利に進めるスキルの習得で後半は良くも悪くもどんどん楽になっていくので、飽きてきたとしても最後まで突っ走ってほしいところです。
ゲームに参加するキャラクターやグノーシア(人狼)の数、各役職のオンオフ、主人公の役職は少し進めると自由に切り替えられるようになるのですが、いろいろな組み合わせで遊ぶことでストーリーが展開していくようになっているのもよかったです。
そのあたりの自由度がとにかく高い一方で、ストーリーを進めるためのイベントが出る(出やすい)組み合わせを提案してくれる機能があったり、特定のキャラクターを生き残らせたり吊らないと進まないイベントではしっかりヒントを出してくれるので、設定で迷う場面はほぼないのがグッド(ヒントを実行できるかどうかは普通に実力と運プラス育成具合ですが)。
人狼系ゲームとしてだけでも十分面白いのですが、やはり語りたいのはストーリーやキャラクターの部分です。
そのあたりはネタバレなので追記から。
まずメインストーリーというかトゥルーエンドあたりの話を。
グノーシアには人間とそうでないものの区別が曖昧な存在がとにかくしつこいほどに登場します。
ヒトである自らの肉体を失う/捨てる存在であるしげみちやシピ、マナンにジナの母。逆に生物的にヒトではないが人格と呼べるものを持つ存在であるオトメにステラ、「人間である」グノース/グノーシア、グノーシアに対する人間の呼称。
そうしたものたちを繰り返し繰り返し見たり、グノースの正体を追い求める中で、プレイヤーは必ず「人間とは何か」という問いが頭に浮かぶことでしょう。
まず、オトメやステラは人間とは呼べないのか?
個人の人格を持ち、思考し、私たちと話をするオトメたちを私は人間だと思うし、作中でもそのように(ジョナスだったと思いますが)発言されます。理屈ではなく、誰もが感情でそう思うはずです。
では人間でないとはなんなのか。それは個人の人格や思考を持たず、対話しないこと。つまりグノースです。(そしてグノーシア≠グノースでもありますね。)
個人としての自我も人格も失い、いなくなるのはイコール死でもあり、人間として存在する/生きることは、常にグノースを否定し戦うことだと言えます。
グノース/グノーシアという脅威から物理的に命を守ること、そのための議論(人狼ゲーム)という行為が、こうした観念の上でもまったく同様の意味を持つ構造が美しくて好きです。
終盤あたりまでには、グノーシアの物語を通して、プレイヤーは登場人物たちに愛着を持ち、全員を生き残らせる未来に辿り着きたいと願うセツに同調し、「人間であるみんな」に「生きてほしい」と望み、自ら最良の結末を得るための努力をすることになります。
それは誰でもない、プレイヤーである「私」自身の願いです。望んだのも、頑張るのも、現実のこの私です。
そしてその「私」が宿るのは、何度も何度もセツと共にループを繰り返した主人公であり、ポッドの中で眠り続けていた知らない誰かさんではありません。
つまりは、主人公は現実世界でゲームを遊ぶ「私」なのです。
もちろんゲームに限らず受け手の願望や感情をあえて裏切る作品、主人公≠受け手を突きつける作品もさまざまにありますし、そういうものも私は大好きですが、ともかくグノーシアはそうした構造のもとにあります。
またメタ的な考え方を抜きにしても、主人公だと呼べるのは(主人公)という名前の肉体ではなく、何度もループを繰り返した魂であることは明らかです。
人間とは、その人とは、あなたとは、私とは、生きているとはなんなのか。それは「私はここにいる」「私こそが私である」と思うことです。
みんなを、セツを助けたいと思う「私」は「私」だけ。私のセツはあなただけ。
永遠の別れの切ないエンディングでしたが、私がそう思うように、セツも「私」に対してそう思ってくれること、そう思ってくれるセツの存在を守れたことがなにより嬉しくて泣けてしまいました。
世界や各キャラの設定や物語のすべてがそうした「私はここにいる」ということ、存在の賛美に深くつながり、収束するつくりが堅実で美しく、とても好きな作品になりました。
というかこういうテーマ自体が好きなので好きじゃないわけないやろがい(ファフナーとか好き)。
以下キャラ別に雑記。
・セツ
我らが相棒。なんかもうただ好きとか通り越してセッちゃんが大切……オレが守護(まも)る……みたいな感情になります。
それを煽るときどきちょっとポンコツ気味な一面があざとい、んですが、沙明のことついうっかり殺しちゃわないでください。
沙明をセツがそれほどまでに嫌う理由って実際のところあまり描かれなかったように思うのですが、汎化を選ぶ=男女の性から離脱する、恋愛と縁を切るニュアンスが含まれる感じを見ると隙あらばゲスいセクハラの沙明ってセツ的にはかなり我慢ならないのかもしれませんね。
ましてや言うこと聞かないやつは排除した方がいいと判断できる緊急の状況かつ軍人のセツでは……ということなのかも? ほぼ我慢できてるだけで偉い説まであるのかも(やっぱり殺しちゃダメですが)。
ループを繰り返し、みんなゲームのたびにリセット・シャッフルされてしまう状況で、順番が違うとはいえ事情を共有し、ときに人間とグノーシアに別れようとも共闘できるセツの存在は本当に心強かったです。
セツが自分と引き換えにしてでも主人公を救いたいと願った気持ちは十分すぎるほどわかるのですが、それでもノーマルエンドでは悲しすぎたので、セツをループから救い、ことばを交わすことのできる結末で本当によかった。
・SQ
周りを翻弄するおどけた言動とその裏の本心がなんともいじらしく、胸にくるキャラクターでした。
序盤はチュートリアルでグノーシアなのも相まって信用できない感が強いですが(そんな印象植え付けといて別人オチなの不憫すぎ)、だんだん普通に気さくないい子なのがわかってくるのもおいしいところ。
イベントではふたりきりで生き残るEDがやっぱり印象的です。あのイベントの力の入りようはさすがセツを差し置いて看板扱いされている女だなと思いました。ある意味ラスボスでもあるし。
SQはとりわけアイデンティティがキーワードになっているキャラで、事故で生まれた望まれない自我が初めて誰かと選び選ばれ、愛し愛されることの衝撃と喜びはどれほどのものだったろうと思います。
あのSQは、主人公とそうした関係になることでマナンのコピーではなくSQという個人になったと言えるのかもなと。
一連のスチルはどれも素晴らしい表情でグッときたのですが、最後に顔に「結果を表示します」がかぶる演出も、それをぶち破って「大好き」と叫ぶSQもめちゃくちゃによくてボロ泣きでした。
ゲーム的な表示では直感で嘘を見抜く演出やバグ勝利で世界が消失する演出もストーリーの随所でよい使い方をされていますが、やはり一番好きなのはこれですね。
・ラキオ
そもそも相当め〜〜んどくさいし議論ではかなり頻繁に敵に回って厄介なのですが、どこか子供っぽく感じられてかわいかったり、助けるときはきっちり助けてくれたりとこれまたあざとい。プロフィールでは汎ですが身体は手術前なのもことさら若者っぽくてグッときます。
実力派・理論派で実際有能でもあり、なかなか人を信用せず見極めようとしてくる人物なので、嘘をついているときに乗員ラキオにクイズを出されるとなんかもうすごい感情になってしまいました。頭から丸呑みにしちゃいたい。
賢いしそもそも銀の鍵についてよく知っているので、きっかけさえあれば話が爆速で進むのがちょっと面白かったです。
セツは主人公にばっかり感謝してくれますが、元を辿ればラキオの親切で銀の鍵が手に入ってるのが大きいみたいなとこがこう……カワイイですよね……。鍵だけ置いといてもいいのに憎まれ口の置き手紙で譲る意思を示してくれるのが愛おしい。
自信家で何より自分の納得ややり方にこだわる人物なので、自分の手で革命した社会に自分で納得いく形に変えた裸体の像を飾るのはさぞかし気分がよかっただろうと思われて後日談が好き。
あれだけボロクソ言ったレムナンをリーダーに革命を成し遂げてるのもちょっと面白すぎるんですよね。二頭体制とも取れなくもない文面ですが、そうだとしても相当ちゃんと認めてないとそんなことしないでしょうし、レムナンとの(その後の)関係が気になりすぎます。
・ジナ
無口だけど優しくて笑顔が素敵で言うときはバシッと言う人、という印象。マナンにここ一番で思いっきり言ってくれたのは溜飲が下がりました。
ただしそういう性格・言動ゆえ議論では損をしがち(おまけに自分の武器をあまり理解していないし)な印象で、いつの間にか吊られていることが多かったです。不憫。
コールドスリープ時の台詞やアラコシアのイベントなど、とにかく善良すぎるほど善良で他人を愛する人物なのがひしひしと伝わり、守ってあげたいというかこの人物はちゃんと保護されていなければいけないのでは!? という気持ちになります。デスゲームに巻き込むな。
いつも穏やかで欠点らしい欠点もなく、少し一緒にいれば誰もが彼女を好きになるだろうと自然と思いますので、後日談の文面がとても好きです。
・ステラ
自我芽生えた系ロボ、好きなんですよね……。自我芽生えたての赤ちゃんパターンも大好きなのですが、最初はただ真似ていたものが永い時間を経て自分自身となるステラもたまらない。
「幸せになりたい」と願うステラがもはや「人間」であることに疑いはありませんが、冷静で利他的かつ大局・論理性重視の性格からは宇宙船の擬知体がベースにあることが感じられて面白いですね。
LeViとしてもかなり人間くさい反応を返してくるシーンが多々あり、LeVi=ステラとわかって見てみるとより愛着が湧いてきます。いい人。でも議論ではかなり主人公を吊ろうとしてくるので基本敵。
心が生まれたAIというとベタなところでもありますが、ステラではやはりジョナスとの組み合わせが面白いですよね。あそこまで頑なに信じてくれないとなると笑うしかない。
とはいえジョナスがジョナスなのを差っ引いても人間として見てまったく違和感がないというお話で、なんならジョナスは死ぬまでステラは人間だと信じていたのではないかなと思います。
・ジョナス
なんだったんですかねこの人。謎の大物っぽいオーラを放っているし実際大物と言って差し支えないはずの人物なのですが、作中の言動を振り返ってみると3本ほどネジの外れたダメなおじさんとしか言えない。
攻略上はボスのひとりと言える存在で、倉庫のイベントでは何度かループさせられましたが、ラキオや夕里子と違って特に役に立ってくれない(邪魔してくるだけ)のもひどいですね。あと自己陶酔感がわりとキモいし。うやむやにするのやめてほしいし。
あまりにもすぎて一周回って許してしまう感じもあるんですけどね。ジョナスだから仕方ないねみたいな。ジョナスクオリティだね。
とはいえ結局いい印象はないな……。ほめるのはなかなか難しいです。でも嫌いとまではいかないので、やっぱりそこが魅力なんだと思います。なんでもないときだと多少うっとうしいだけでわりと面白いおじさんだし。
・コメット
ジナとは違った方向でたいへん人好きのするタイプですね。元気で明るくチャーミングで、かついろいろな意味でドキッとさせてくるところもあり、なんというか攻撃力が高い子だなと思います。なかなか攻めたビジュアルも魅力的。
最初はちょっと食えない感じもするのですが、照れ顔の破壊力がやっぱりすごい。グノーシア時のヴェールをかぶった風の立ち絵も印象が変わって素敵ですよね。あとすぐ頼ってくるので恋しちゃいそうでした。まあ裏切るんですけど……。
過酷な環境の星で生き延びてきたばかりか、密航をしてまで夢を叶えようとするというキャラクターで、個性的な面々の中でもかなり自我が強い印象ですね。グノーシアになっても夢を貫く気満々なのがグッときました。
あとコメットと言えば例の粘菌なんですが、コメット自身は絡まないイベントなので本人が見たらどう思うかは気になりましたね。生存・共生のために取りつかせているものなので、本来あれほど危険なものでもないとも考えられる気がしますが(逆に敵や捕食対象とみなしたものに対しては元々ああだとも)……。
・シピ
猫になりたいとかなろうとしているまではわからなくないのですが、そこから首に猫が生えているお兄さんというビジュアルはなかなか真似できない発想ですよね。あまりにも平然としているし誰もつっこまないのでしばらくダイレクトに生えてることに気付きませんでした。
言動的には誰にでも公平かつ当たり障りのない振る舞いで淡白な印象なのですが、そこと直感の鋭い点や猫になりたい(自分は猫だ・人間をやめたい)という点をあわせると、生きづらそうな感じが伝わってくる気がします。人間の真似して生きてる感覚なんですかね。
そもそも自分は人間でなく猫だという考えの持ち主であり、それが非常に強固でもあるので、猫の体になってもシピという存在であり続けるのではないかなという気がします。
(シピとは少し違いますが)死んだり人間をやめて楽になりたいみたいな考えってありがちですが、そういうのってできたとしてもそれを認識して楽になった、救われたと思う自分がいなくなってしまう点ではやっても意味がないよなと私は思うので、シピ(やマナン)がそういうふうに自己を保てるのだとしたら夢がある話だなと思いました。
・レムナン
絶望顔がかわいいで賞。かなりえげつない過去の持ち主っぽいし茶化してはいけないとは思うのですが、なにかとリアクションや表情が嗜虐心を刺激してきてドキドキしてしまいます。ほんといい顔するんですよね……。なんか明らかに何回もひどい目に遭ってたし。
なつくとすごく素直に慕ってくるところも含めて悪い人間を惹きつけるものを持っていますよね。それとこれとをセットで見せられたら裏切って曇らせたくなっちゃうじゃん。ちょっと違うんですが、グノーシア勝利時の主人公さんが導いてくれたから勝てたんです(頬染め)みたいなやつなんて笑ってしまった。
トラウマがあってビクビクオドオドしていたりあからさまに地雷があったりもするのですが、それでも人のよさや他人を好きになる気持ちを失わないでいられるのはむしろ芯は強そうなんですよね。最終的になにか爆発したのか革命のリーダーまでやってしまうのが好きです。
ラキオは褒めたらディスってくるようなやつではありますが、善良で正義感がある人物なのも間違いですし、レムナンはいい相手にめぐり会えたのだろうなと思います。いやほんと気になるなレムナンとラキオのED後。
・ククルシカ
顔がめっちゃかわいい。で終わりたい。ビジュアルは本当に美しく愛らしく、まさに人形のような風貌ですごくいいと思いますし好きです。とってもかわいいですね。
議論パートでは強敵のひとりで、有り余るかわいげでみなを操り序盤からイラつかせてくれます。あらかわいいと思ったらかわいくないし敵、なのが最終的に「そういうキャラ」なのがわかる設計だったのはお見事でした。
このあたり同じく無邪気でかわいい印象のオトメやしげみちは議論での振る舞いがイラつくかと言ったらそうではないので、本当に演出がしっかりしてるんですよね。ククルシカに限らず、それぞれキャラの性格に沿った振る舞いのAIになっているのが素晴らしかったです。
ククルシカに入る前のやりとりなどを見るとどれくらいマナンのままであるかは定かでない、とは言えますが、ククルシカ騒動のトリガーがレムナンと二人きりになることなところを見るとあーこれ邪悪ですね……としかならないんですよね。
長い時間を経ているようですが、それで曖昧になっているものがあるにせよ、あれほどまでに自己を保存したいと願ってそれをすさまじい手段で実行している人なので、マナンとしての核のような部分は失うことがないのではないでしょうか。
・夕里子
アイアンクロー姉貴……なのですが私のプレイではラキオをストレートで生き残らせることに成功してしまったので、またやられている! は後から見て爆笑しました。
夕里子はキーパーソンであり、真相の解明・事態の解決に大きく協力してくれる人物ですが、あまりなにかを語ってくれるわけでもありません。でも謎は謎のままが夕里子に限ってはらしいのかも。
とはいえ何度もいくつもの世界で手を貸してくれること、グノースの正体を知っていて星舟から逃げたこと、議論に普通に参加してくれることなどを考えると、見た目ほど謎というか読めない人物でもない気がします。正義感からの行動というほどではないのでしょうけど。
夕里子は明らかになんらかの超常的な能力を持っているように見えますが、人間の電脳化は夕里子たち限られた人間しかできないということなどを見ると科学的な技術というわけでもないのでしょうか?
事件に関してもあくまであの船でのグノーシア事件と主人公とセツのループが終わったというだけで、特に世界やグノーシアがどうこうなったという話ではないので、あの世界のこと自体はまだまだ掘り下げようがあると思うので、なんらかの続編があったらいいなと思いました。
・オトメ
かわいいですね。白イルカなんてかわいいに決まっている。ステラもそうなのですが、基本的にちゃんと人間でありつつ個性程度に人外なのがいい感じです。キュって鳴いたり独特の口調だったりがかわいらしい。
車椅子? に乗っているのが好きなのですが、ゲーム画面だと基本的に映らないのが残念です。車椅子ふくめ、いろいろと地上で暮らすためのものらしい装備をつけているのがいいですよね。不便もありそうなので、レムナンが親切にも助けてくれるというくだりが好きです。
人間になりたいということで、自分を知性化してくれた博士に感謝しているのはわかるのですが、「好き」のニュアンスふくめどういう人でどんな関係だったのか気になりますね。オトメちゃんが大好きな人だったらほぼ間違いなくいい人なんですが。
動物の知性化は沙明でも触れられるネタであり、沙明は自らの事情からオトメのことを密かに気にかけているという話なのですが、オトメの方はそんなことは知るよしもないのがよかったです。沙明が勝手な思い入れを押し付けないという点でもそうですし、そんなことを知らなくても平等に沙明をも好きなオトメちゃんをいいなと思うので。
・沙明
人気ありそうなキャラだな〜という感想。私も好きですが。基本コメディリリーフなのですが、真面目だったり優しさや不器用なところもありつつ、そこをなかなか見せないいじらしさはちょっと好きになっちゃいますよね。あざとい。
下衆いエロキャラ、という立ち位置のキャラクターなのですが、描写としては嫌な感じがなく呑み込みやすいのがよかったです。ウザいところはありますが基本的に攻撃性がないですし、基本具体的に誰かの外見に言及したりしないんですよね。
それは沙明に限らずのことで、いろいろな種族や特徴、性別や考え方のキャラクターがいて、ほめるけなすに関わらず他者の外見を評価したりセクハラしたりする描写がないことはすごくよかったなと思います。それでいて沙明もちゃんとこういうキャラとして立っているのでうまい。沙明に関しては自主規制でマイルドになっている部分もあるようですが。
ボノボうんぬんは新世界よりで見たやつ! になりました。あくまで小ネタというか本筋でない感じですが、エロキャラなのはその辺が大いに関係ありそうですね。ご両親は立派な人だったっぽい雰囲気なんですけど、子供をボノボの群れに投入するのは性教育的にアリなのか気になります。
粘菌イベントでは切ない展開からのギャグからの切ないで情緒が乱れてしまいました。ストレートにかっこつけられないのが彼らしさではあるのですが、そこで助かろうとせずに意志を貫くのもまたらしさですよね。沙明に限らずですが、グノーシアになっても己の意志を貫くシーンが好きです。
・しげみち
基本的に外見にタッチしないゲームでほぼ唯一かなり触れられるキャラクターですね。動物も知性化する宇宙時代でも異様な外見なんだなあ、グレイ型宇宙人。憧れだったとはいえこんな姿になって……と言いたくもなってしまうのですが(というのが差別意識)、ひねくれもせず明るく元気に生きているのが素晴らしいです。
人柄としては普通の気さくなあんちゃんという感じで、グノーシアになっても友情パワーとかほざいてくれるので癒されます。とはいえ普通のいい人なので議論では強みがなく、いつの間にか吊られているか消滅しているかが多かったですね。グノーシア仲間になってもあまり一緒に生き残れなかったような……。
本作ではいろいろと人間の肉体/姿を失う人びとが描かれているのですが、しげみちはその中でほぼ唯一の「失った後」がはっきりと、かつ肯定的に描写されている人物なんですよね(マナンはやや曖昧だったり失敗していたりするので)。
しげみちから言えることもやはり、姿がどんなに変わってもその人はその人だということだと思います。なにがその人をその人たらしめるのかは、外見などではなく自分は自分だと思うことそのものなのでしょうね。しげみち自身はあまり本筋に関わらないキャラクターですが、そういう意味では核心を示していると思います。しげみち大事。
そういえばこれで年内最後の更新になりそうですね。今年はまあそこそこブログを更新できたのでは。完全にゲームブログと化していますが、来年はヴェラキッカを観る予定なので感想書きたいですね。それではよいお年を。