昭和45年。 大阪万博が開幕し、ビートルズが解散し、力石徹の葬儀が執り行われ、アポロ13号が地球に帰還し、植村直己が日本人で初めてエベレスト登頂に成功し、三島由紀夫が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を図り、それでも「未来」がまだ「希望」と同じ意味を持っていた時代。
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ハムレット」を下敷きに、激動の昭和時代を生きた青年たちの姿を描く≪浪花節シェイクスピア≫が誕生する。昭和大阪、「浪花坂」という架空の下町に生きる彼らは、少年時代に別れを告げ、未来になにを見るのか?
劇団Patch記念すべき第10回公演は、久々の外部客演なしでお届けする昭和の青春物語。
生活としていろいろあったりなかったりしないわけでもなかったのですが、書きたいことが溜まりまくった結果、書く書くと言いつつ逆にブログめんどい状態に陥っていたことを告白しつつお詫び申し上げます。途中まで書いてだいぶ放置していたので文章中テンションに温度差がみられる可能性もあります。すみません。
というか下書きを寝かせていた間にいろいろと発表ありましたねぱっちさん。次回本公演決定&東京公演おめでとうございます。楽しみにしています。
個人的な前置きみたいなものは前の記事を見ていただくこととしまして、今回も行ってきました。羽生蓮太郎、略してハブレン。いつものABCホールではなく、インディペンデントシアター2ndでの公演です。
こちらの劇場に行くのは初めてだったんですが、舞台や客席は公演ごとに自由に配置されるみたいですね。ハブレンは二面でこんな感じ(実際はもっと椅子が置かれていましたが)。
【本日開幕】
— 劇団Patch 【公式】 (@west_patch) 2017年4月20日
Patch stage vol.10『羽生蓮太郎』(作・演出 末満健一)が本日より開幕!4月24日までindependent→theatre2ndにて!最寄り駅は地下鉄堺筋線の恵美須町(えびすちょう)駅です!本日、当日券販売はございません予めご了承下さい。#ハブレン pic.twitter.com/0fyc8qAc9S
逆に(?)三面でのお芝居は一度観たことがあったんですが二面は初めて。回ごとに座る位置を変えてみたのですが、色々な視点から観られて面白かったです。
さて、「羽生蓮太郎」はシェイクスピアの「ハムレット」を下敷きとした昭和のお話です。ハムレットをよく知らなくてもあらすじは作中でそれとなく説明が入りますし、ハブレン自体もひとつの物語としてしっかりできているので大丈夫。人物の対応(と役者の名前)も冒頭で紹介してくれる親切設計でした。ハブレン→ハムレット→ハブレンが一番たっぷり楽しめるかも。
とはいえやはり「ハムレット」ありきの劇ということで、岩波の文庫を読んで臨みました。たしょう脱線しますが、これが面白かったんですよね。単純にマイナーな知識から聖句の引用、キリスト教や当時の価値観・文化背景に基づく台詞、スラングや比喩、解釈の分かれる部分などなど、補注が行き届いていて知識ゼロからでも非常に快適でした。訳も最近のもので読みやすいですし、1000円と文庫としてはちょっとお高めですがオススメです。あと「私シェイクスピアとか読んじゃってる…格調高い…」みたいな気分になれます(´>ω∂`)
で、ハムレットを読んでみるとそういう当時の価値観やキリスト教的な発言・思考が多いので、これを昭和に変換するってどんな感じかしらと思っていたのですが、ハブレンは単純な「昭和版ハムレット」とかではないですね。単純に登場人物やストーリーを移し替えると言ったものではない。インスパイアとか本歌取りの方が近いでしょうか。
ここから少々ネタバレ。「羽生蓮太郎」はおそらく多分にメタ的な演劇である(批評家気取り)。「ハムレット」でありながら「ハムレット」に言及する的なやつ。最初は大まかにハムレットの筋をなぞりながら進行していきますが、中盤で演劇「ハムレット」が作中に登場してきます(ハムレットの劇中劇のシーンにあたる)。そこで彼らは「ハムレット」の登場人物である自分たちに言わば気付き、物語は確実に別の方向へ転がり始める。
これがすごくメタだなと思うんですね。羽生蓮太郎くんはハムレットである自分を、この物語(一連の出来事)を意識する。末満さんの演劇はもともとメタ発言・役者ネタなどを入れる方ではありますが、それにしてもハブレンは笑いの要素にしてもそれらや、いわゆる第四の壁を破ったり、演劇そのもの(見えない扉、兼役など)をネタにしたシーンがとても多いです。だからハブレンはメタい。「ハムレット」も劇中劇を用いるメタ的な要素を持つ作品なので、そこを意識しているのでしょうか。ところで「タ」がゲシュタルト崩壊してきたしメタの意味が合ってるかどうか不安になってきました。
「羽生蓮太郎」は感情移入して物語を楽しむことも、ちょっと引いて構造を楽しむこともできる、一粒で何度もおいしいお芝居だと思います。あとはもちろん昭和の雰囲気ですね。ストーリーや登場人物の変換具合だとか、原作の台詞をチラッと引用していたり、明らかにあの台詞が元になってるなとわかるものがあったりとか、そういう方向でも楽しい。ハブレン、とても好きな作品です。自分内ぱっちランキングかなりの上位。「演劇を楽しむ」という点では一番かも。二面舞台かつ舞台の位置が低め(というか床)だったのでDVDにどんな風に映っているのか気になりますが、早くまた観たいものです。
以下はメンバーや登場人物についてなど。たたみます。
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