ミュージカル「マリーゴールド」の感想

母と娘には互いが必要であった。
青年はその母を自由にしてやりたかった。
少年たちは娘に「同じ夢を見よう」と語りかけた。


劇作家・末満健一がライフワークとして2009年より展開する、
「永遠の命」に翻弄される者たちの悲哀を描くゴシックファンタジー『TRUMP』。
最新作は、血と命を巡る愛の物語を描き出し、新たな真実を解き明かす――。

大千秋楽おめでとうございました。愛と生と死の物語、マリーゴールド。終幕を迎えてみると早かったですね。こうして年一ペースでシリーズの新作を観られることが幸せ。グランギニョルとかもう1年経つのかって感じですし。シリーズと言えば無事に戯曲集も買えましたのであとはマリゴのDVDと繭期サントラを待つだけですね。充実してるなあ。マリゴTシャツも早速パジャマになっております。

さて、作品全体への感想は前回記事でだいたい書きましたので、今回は細かいところをダラダラといっております。シリーズ過去作含めネタバレですのでたたみます。

 

アナベル壮一帆

美しい。元男役の方だけあってかどっしりした格好良さ、パワーがあるんですが、そういう強さ、あるいは強く振る舞う裏側の弱さの見せ方もすごくよくて好きです。本作の登場人物には人間的な弱さを感じることが多いですね。アナベルも一見すると冷酷な女、ひどい母親のようでいて、自分を取り巻く問題や己の弱さと懸命に戦いつつ、それを押し隠しているひとりの人間で。

グランギニョルでフリーダは「幸せであろうと努力しているわ」と語りましたが、アナベルは彼女の系譜なのかなと思います。これって単に幸せになるために頑張る、というだけではなくて、幸せであるかのように振る舞うという意味も内包されているんですよね。アナベルがいかにもハッピーに過ごしているかというとそうではないけれど、問題を感じさせないというか、あたかも問題などないように振る舞う努力を彼女はしている。もちろん問題があること自体は明らかなので、それが序盤のなんだこいつ感とその後の印象の変化を生み出しているんですね。

その一方でアナベルは「永遠なんてクソ食らえ」と言えず、TRUMPを求める弱さを抱える人でもあります。母が愛する娘に生きてほしいと思うのは当たり前のことで、だからこそ痛ましい。アナベルとガーベラが愛し合っていながらもすれ違ってしまうありさま、ほんとつらいんですよね…。

「我は守護者なり」はTRUMPから受け継がれる名台詞でありますが、やはりこれを発する人は多かれ少なかれ守護対象の意思を無視したエゴイスト。誰かを愛し、そこから出た行動であっても、それが相手の望むことであるとは限らないんですよね。アナベルにだけ言えることではなくて、もう全員に対して「愛は全部エゴ!!!!!!!」みたいな話だったかと思いますが。しかし、だからこそエゴだから悪だというわけではないとも言えるのではないでしょうか。

ガーベラはただ母と二人で閉じていればよかった。しかし、そもそも他のすべてを断ち、ひとつの愛さえあればいいと言って、結果的には彼女がそう望むようにしたのがアナベルだというのが皮肉で、ままならない話だなと思います。

アナベルは悪人では絶対にないけれど、ガーベラの気持ちを理解することができていたかと言われるとノーなんですよね。どうしたって独り善がりなのが彼女なのだと思う。アナベル花言葉は「ひたむきな愛情」「辛抱強い愛情」だそうですが、彼女の場合は良くも悪くもって感じなのかな。

それでも最終的には短い命でも幸せに、というところに落ち着きかけるのにああなってしまうのは末満さんったら…という気持ちにならざるを得ませんね。そのまま4人は家族として幸せに暮らしましたでええやん(歴史歪むしだめだよ)。

最期にアナベルは希望のことばをガーベラに伝えるわけですが、イニシアチブに打ち克ったことと言い、愛だなあと。まあその愛が真っ当に報われるかと言うと特にそんなことないんですけど…。演出家てめーの血の色言ってみろ(5・7・5)

 

 

 ・ガーベラ(田村芽実

我らがめいめい。3作ってTRUMPシリーズではひょっとして最多出演ですかね? 再演含めて3回出ている人なら他にもいるんですが、全部違う役は彼女だけかな。すごいですね。マリーゴールド、キキ、ガーベラ、それぞれに違う魅力があって大好きです。それにやっぱり歌がうまい。「あたしは希望」や壮さんとのデュエットは圧巻でした。

ガーベラは観ていて気の毒というか、周囲の感情や思惑に振り回されてばかりでかわいそうだったなと思います。(母以外の)誰からも愛されなくていいと言われ、その通り母と二人の世界を望んだだけなのに、周りはそうさせてくれない。何一つ許されない人生で、たったひとつの小さな望みが叶わない。悪意もそうですが、善意の人ですら彼女の邪魔をする。

まあ母子ふたりぼっちで閉じこもるのはあまり健全ではないだろうし、家族四人で幸せに暮らせるのならそれが一番なのではないかと思われるのですが、ガーベラにしてみたら知るかんなもんって感じなのもわかるんですよね。誰も彼も彼女に自分の願いを押し付けて、本当に勝手ですよ。彼女の望み通り、母と二人にしてやることも(死ぬとしても)ひとつの道だったはずなのに。ままならないなあ。

ガーベラがどうしてああも頑ななのかということに関しては、やはりアナベルに「ひとつの愛だけでいい」と言われ、それを唯一の救い、人生への肯定に感じたからなのだと思います。ガーベラの中で最も従うべきものは、厳密には「母の言葉」ではなく「ひとつの愛」、それまで受けてきた抑圧なんですよね。

これを否定すると、今までの人生なんだったんだ? 愛する母さんの言ってきたことやしてきたことは? ということになってしまう。心を守るためには、「ひとつの愛」に殉じざるを得なかったのではないかと思いました。解放されることでむしろ壊れてしまうだろうというのは悲しい。永遠の命を拒否したのはこれと、何よりアナベルを愛しているから、言葉通りの気持ちでしょう。

それにエリカの愛情をガーベラが受け容れられないのは本当に切なかった。もしも母の「ひとつの愛」以外に彼女に向く愛があるなら、あるいはそれを受け容れていいのなら、彼女をギリギリで支える「ひとつの愛」は崩壊してしまう。

それにガーベラはエリカの矛盾と複雑性をとても飲み下せていなかったのではないかと思います。大人⇔子供の複雑⇔単純という対比もありそうですが、単純に人間関係ほぼ皆無のガーベラにはちょっと難しい話だったのかも。アナベルはTRUMP云々言い始めるまでは終始一貫した態度ですし、ヘンルーダも情緒不安定って感じではないしなー。

エリカが本心ガーベラを愛していることは、ちゃんと肌では感じていたと思うんですね。「いらない」ということは、存在自体は認めている。しかしだからこそ意味がわからなかった。受け容れたい気持ちも多分少しあったんじゃないでしょうか。時間さえかければガーベラとエリカはちゃんと仲良くなれたんだろうなあ。

 

コリウス東啓介

リアクション芸人。野比のび太オルタ。陸に上がった魚。花言葉が「かなわぬ恋」の出オチ男脚が50メートルあるなんかきもちわるいルックスはかっこいい人。しかしとてもよく頑張ったので頑張ったで賞。グレー→闇堕ち…と見せかけて自力で光堕ちしたのでえらい。したところで結局独り善がりエゴイストくんなんですが…。ドンマイ! 来世がんばろ!

東さんはグランギニョルぶり二度目だったんですがお歌うまいなー。ミュージカルで活躍されてることは知ってたんですが、聴き応えがあって楽しい。壮さんや吉野さんと掛け合っても物足りないってことがないんですよね。またミュージカルで観たいな。

しかしスタイル抜群のイケメン捕まえてきてあんな絶妙に気持ち悪い役やらせるのが良いですよね。末満さんのTwitterでも起用の理由が書かれていましたが、期待とかやらせたいことがよくわかる。ソロ「彼女に自由を」のラストとか本当になんか気持ち悪くて好きです。あと序盤やることなすこと全部スベってるのとかもきもくてソワソワしてしまう。

コリウスくんは最も「愛はすべてエゴ」をわかりやすく表現しているキャラなのかなと思います。彼の想いとか言ってることやってることっていうのはすべて独り善がりの押し付けで、誰にも受け取ってもらえないんですよね。

けれどそれはコリウスが歪んでいるから、間違っているからというわけでは必ずしもない。ヘンルーダに正論ぶちまけるくだりなんて悲しくなってしまいました。言ってることは間違いなくコリウスが正しくてヘンルーダがドヘタレなんだけど、アナベルヘンルーダの間にコリウスが入り込めるわけでは1ミリもない。

コリウスくんの偉いところっていうのは、自覚の有無はわかりませんがそこを受け容れて開き直ったところで。彼は本当にとてもよく頑張ったと思う。まあ最期までガーベラに勝手に押し付けていくわけですけど。あれ、ガーベラからしてみたら顔見知り程度のよく知らん人から勝手に「約束してくれ」とか言われて死なれたのでけっこう謎ですよね。

面白いのは、愛とはエゴなのだという理解こそ無私の愛というものに近づくらしいことですね。エリカにも共通する話。不思議な話というかうまく説明できていないかもしれませんが、「これは自分が勝手にやっていることだ」という自覚があればあるほど、自分を捨てる方向に行くような気がするんですよね。その是非はさておき。

コリウスとエリカは似ているので、彼の最期を看取り、悼んだのがエリカという構図が好きです。彼のことをたぶん一番理解できるのはエリカだから。アナベルに悲しんでもらえなかったのはコリウスくん的には残念だと思いますが。ドンマイ。生きよ(死んだよ)

 

・エリカ(愛加あゆ)

人間性が一番好きな人。なんていうかほんと人間らしいんですよね。複雑で矛盾していて、それに葛藤していて、弱くて強い。一言でまとめると「自分が思ってる十倍はいい人」って感じなのが愛おしい人です。まどマギでたとえるとさやかちゃん。

エリカさんは自分のことを汚い、悪い人間だと思っているし、実際ガーベラに悪感情を持っていたりするわけですが、同時にそれをいけないことだと感じる良心の持ち主でもあります。「あんたなんかいなくなればいいんだわ」程度の罵倒でかわいそうなくらい狼狽するのは間違いなく優しさや柔らかさの発露なんですよね。

ガーベラがいないところで悪口を言う場面の演技が好きです。「自分に嘘をついている」のくだりなどもそうなんですが、エリカは必要以上に悪ぶるというか、おそらく無意識に悪人の演技をする部分があるんですよね。現実にガーベラと相対すればまともに罵ることもできないのに。かわいい人ですよ。このへんは終盤気丈に振る舞う姿ともなんとなく通じる部分で、演じることで外側から自分を作るタイプの人なのかなあとか。

彼女自身苦しかっただろうことは、それでいてやっぱりガーベラを憎む気持ちも本物ではあったということです。もどかしくて…と歌っている通りでしょう。本当はとても優しい人なので、憎しみの感情があること自体がつらかっただろうと思います。それで余計に嫌って嫌われる悪循環。

「創作の登場人物は一貫性がある方が評価されるが、実際の人間には一貫性など滅多にない」というような話を以前何かで見たのですが、なんとなくそれを思い出す人物造形でした。エリカさんは成長(と言えばいいのか)という形でひとつ軸をしっかり持たされているんですけど。

彼女が昏睡して夢を見ていた時間というのは、自分を見つめ直し、ぐちゃぐちゃな心の中を整理する時間だったのかなと思います。壊れた欠片を拾い集め、罪と罰の概念に当てはめることで、エリカはパズルを完成させる。そうして心の底の真実、ただガーベラに嫉妬していただけだということを見つける。

ダンピールどうこうとかは本当は関係ないんですよね。ただ家族を壊されたことを恨み、姉を奪われて妬んでいただけ。けれど実際問題ガーベラ自身に罪はないので、勝手に憎んでいたエリカに罪があると。まあ守るためとはいえ、何一つ話さずに14歳のエリカを追い出したアナベルさんサイドにほぼ原因はあるんですけどね。ほんと愛ってエゴですね…。

エリカさんがすごいのは、真相を何一つ知らずにガーベラも含めて家族みんな愛してる、の境地に至り、最期まで愛を貫いたところ。本当のことを知れば言ってくれればと怒りこそすれ、ガーベラへの憎しみをなくすことはわりと簡単だったと思うのですが、それではたぶん意味がないんですよね。

何も知らないからこそ彼女はすべてを受け容れた、あるいは赦したと言えるでしょう。細かいことなんて関係のない、心の奥底の本音、シンプルな感情をエリカは自力で見つけ出した。それが大事なのであって、人から真実を与えられ導かれたのでは自分で愛を掴んだことにはならない。そういう話なんじゃないかなあ。あまりまとまってませんが。

あと、彼女が自動的に「罰を受ける」ことと自分から「罪滅ぼしをする」ことはちゃんと分けて描かれているんじゃないかなと思っていて。ガーベラに「いらないわ」と言われたときのエリカのリアクションが好きなんですよね。少し悲しそうな顔はするんですけど、エリカはそれに対して何も返さない。

エリカ自身が犯した罪のひとつ、ガーベラを憎みつらくあたったことに対する罰として、愛情が簡単に受け容れられないことは当然だとエリカは考えたんでしょうね。そして罪滅ぼしとして、彼女は無私にガーベラに尽くす。

エリカの花言葉としてはおそらく「孤独」「博愛」あたりをイメージしているのかなと思いますが、彼女を見ていると皮肉ですよね。他にも相反する雰囲気の花言葉があるので、その辺から作ったキャラクターなのかもですね。

 

・ソフィ(三津谷亮

別人だと思った? 残念ソフィ・アンダーソンくんでした~!って感じでしたね。あの序盤のパッパラパーなテンションはいったい何意識なのか…長い年月はこうも人を変えるのか…思えばファルスも大概だったな…。明るくかわいい14歳の少年と邪悪な本性、そして2800年を生きた不死者のギャップがよかった。

しかし新作が出るごとに株がどんどん急降下していく初代主人公って知らないですね…。もちろんソフィも被害者だしかわいそうではあるんだけど、だからって加害していいわけではないし、加害度が高すぎてもう何一つ擁護できないよパトラッシュ。冷静になるとLILIUMの時点で相当ダメだったわけですが、今回人の不幸を大爆笑で喜んでたのが決定的にまずかったですね。最悪すぎる(好き)。

本当、あの「Die Brutwelt」のウルと一緒に手を叩いて喜んだり、腹立つ動きで歌ったり、果てはバンザイしながらハケていくのが最悪すぎて最高に好きなんですよね。あと要所要所おつらいシーンでニンマリしてて怖い。ソフィって元々はもちろん人の不幸は蜜の味みたいなタイプでは絶対になかったんですが、己の不幸を呪いながら孤独な永遠の繭期の中で2800年生き続ければ人間変わるわなと改めて。つらいなあ。

その辺含めてハシャいでるのはむろん演技含んでるでしょうが、出てきたあたりのウルとキャピキャピしてるところが何回観ても素直にかわいくて、結局ずっと大好きでした。ソフィは楽しげにしてても心底では冷めてるんだろうなとかウルまじピエロとかそういうのはあるんですけどかわいくてやられてしまう。脇でコソコソしてるところとかもすごくかわいいので、円盤にちゃんと入ってるといいな…無理かな…。

今作の言いたいことは、主に「終わり悪ければすべて悪しではない」「愛されたことがあり、それを知っていれば人生は救われている」ということなんですが、ソフィさんはものすごくこの逆を行っているので、ソフィに冷たい話だなと。ソフィに(現状)終わりはないし、愛された経験はあってももはやそれを知るよしはないんですよね。

ソフィ「君もクランにいればずっと幸せのままでいられたのに」ヘンルーダ「それでも愛さずにはいられなかったんだ」というやりとりが全てというか、ヘンルーダは死ぬけれど正解を掴んでいて、ソフィは生き続けるけど間違っているわけで。ソフィ⇔ヘンルーダに限らず、マリゴは大人は愛のために死に、子供はまともに愛を手にできず生きるお話なのかなー。

ソフィさんで印象的なのはやはり「星の轍」ですよね。嘘の仮面、永遠を生きる化け物(あえてこう呼びたい)の顔ときて、限りなく本音に近い部分を露出させる場面。あの虚脱感とかたまんないよね。ソフィ・アンダーソンという怪物に一番苦しんでいるのはたぶんソフィ本人である。だからってなにが許されるわけでもない派ですけど。

罪は罪であってなにかと相殺できるものではありません。言うだけなら簡単なので言ってみますが、誰かを傷つけたり悪意や矯正でもって道連れにしたりしない生き方は選択できたはず。それでも孤独に押し潰されてしまったこと自体は責められないのでなんとも…という感じだなあ。そもそも繭期で低い判断能力がモリモリ低下してるんだろうな…。有罪だけど情状酌量の余地はちょっとだけあるって感じかも(罪がデカすぎるので)。

つらいことではありますが、ソフィ・アンダーソンはすでにとんでもない人殺しであり、他人に永遠を押し付ける怪物です。少しくらい救いは見出して、最後には死ねたらいいなと思うけど、もう赦されてはいけない。赦されてほしくないですね。自分を赦されていい存在だとは思ってほしくない。こうなってしまった以上。

しかしガーベラと自分にかつての自分とクラウスをダブらせて発狂するソフィさん、本当にいたたまれなくてつらかったな。永遠なんてクソ食らえ。それを一番感じているのは当事者なんてのは当たり前のことです。とはいえ仮にも永遠側に勧誘しているソフィさんのそんな気持ちをガーベラに忖度しろなんて無理な要求なわけで。

しかしまあ、だからこそ君は僕であり僕は君なんですよね。ガーベラは本当にソフィによく似ている。だから助けたわけですが、しかし彼女に特別な価値が生じるかと言えばそういうわけでもないのが残酷なお話。殺した云々は置いといても、結局クランの中でいじめられてても放置してたし…。もうウル以外には他人に価値なんて感じないのかもしれないですね。さみしいな。

 

 

・ウル(土屋神葉

大好き!かわいい!イチオシ!ブロマ買った!(いらん報告) あのメイクと衣装がすごく映えててウルのビジュアルどんぴしゃなんですよね…。素顔見てみるとウルちゃんとはかなり違う雰囲気でびっくりしました。ボールルームは見てたけどお顔は知らなかったので。

しんばくん声優メインっぽいですが、殺陣が素早くて格好良かったので舞台俳優も続けてってほしいなあ。終盤の声の演技の落差はさすが声優さんって感じでしたし、ハイブリッドなタレントとして活躍してほしさ。しかしマリゴウル、本当に推し。大阪公演中、ほかもちゃんと観ようと思いつつウルちゃんに目線を奪われまくりでした。だってかわいいからね! しかたないね。

素直にかわいいのもそうなんですが、アンジェリコ様とタメ張れるピエロっぷりと哀れさがたまらないんですよね。はい、例によって例によりこういう子に萌えます。特に星の轍うたうシーンなんて死ぬほど残酷かつ都合のいい要求に黙って半泣きでお応えするウルちゃんがかわいそうでかわいくてかわいそうで泣けるんだよね(ごめんね)。一度歌トチった回も観ましたが、感極まってって感じだったので逆に余計泣けてしまった。

個人的には「ウル」は、そういう設定と情報を与えられたキャメリアだと思っているんですよね。人格上書きと言うよりは、自分のことをウルだと思い込んでいるキャメリア、くらいがしっくりきます。なので一連の流れでは夢から醒めたような感じがして、残酷だなと。そりゃテンションダダ下がりするわって話ですよ。

しかしあの終盤の「さっさとこいつら殺して帰ろうよ」みたいな白けたノリ、めちゃくちゃ好きですね。キャメリアさんはソフィに本気で友情感じてたと思うのですが(一生懸命イニシアチブにも抗おうとしたし、歌だってうたう)、だからこそひどく傷つき、仮面の剥がれた要介護クソメンヘラのソフィさんに呆れもするわけで。自分の見ていた楽しい夢がいかにぺらぺらのハリボテで、現実がいかに惨憺としたものであるか見せつけられれば誰だってあんなもんでしょう。

キャメリアにとって、ウルだったときはとても楽しい時間だったと思います。彼の自分は特別なんだ、特権階級なんだって意識がダダ漏れなところがとても好きなんですよね。なにしろ哀れで。不老不死のTRUMPの正体を知る僕、そんなTRUMPをしょうがないなってお世話してあげる僕、クランの秘密を知る僕。そんな僕ってすごい、あるいはそう思ってすらいないような無邪気な傲慢。本当は彼にはなんの特別さもなくて、全部適当に与えられたものに過ぎないのに。

わかりやすいのがソフィとのシーンで、「またみんな殺さなきゃならなくなる」というソフィの台詞をまるで他人事のように聞いているところとか。自分は殺されないと思ってるんですよ。本当ピエロもいいとこですね。かわいいね。お前も殺処分されるんだぞ。実際はソフィじゃなくてリリーさんにやられたわけですが。しかしキャメリアさん戦闘力が高すぎてあのとき本当にタダで死んだのかと思っちゃった(死にました)。

「ウル」だという思い込みを元に戻しても諸々の知識が消えなかったのは、理由があるとすれば完全に何も知らない状態にしちゃうといろいろ面倒だからでしょうか。ソフィさん意外と冷静だったことになりますが。終盤のあの投げやり感ってほんと好きなんですが、クランに帰ったら帰ったでまた記憶を消されて明るく元気なキャメリアくんに戻るんだなと思うと諸行無常

マリーゴールドだけ見ると、ウルだったときはいい夢見てたなと思うんですが、全体を見るとマリーゴールドでの出来事は逆に悪い夢みたいなものなのかもしれませんね。まあ疑似クランなんかに連れてこられた時点で人生共同幻想ユートピアか~!ワハハ!(棒)

 

・ベンジャミン(宮川浩)

なかなかの外道。ベンジャミンの花言葉はいろいろあるそうですが、ポジティブなものばかりで、あまりストレートにしっくり来るものはないですね。「家族の絆(家族愛)」が採られてはいそうですが。劇中の言動ってすべて愛する家族を奪われたがゆえですし。そのうちなんかのスピンオフで闇堕ち前の家族愛あふれたベンジャミンさん出そう。もともとは共存主義者とかありそうだなー。

出番はやや少なめでしたが、歌の存在感がすごくて印象深いキャラクターです。宮川さん初見だったのですが、声量あってビリビリくる歌声ですよね。かっこいい。でも歌の内容はかっこよくない。ひどい。ぶん殴ってくるような歌がパワーのある言葉で人心を操る人物なんだなと感じさせてきて、ミュージカルって面白いなあと思いました(こなみ)。

ベンジャミンさんは警察官としては職権濫用しまくりだしすぐ手が出るしダメダメもいいところですが、行動原理は一番わかりやすい人と言えるでしょう。息子を殺したダンピールへの復讐、憎しみというシンプルなモチベーション。逆に今までよくまともに(?)仕事続けて来られたなってくらいの振り切りぶりですよね。これは偏見なんですが絶対捕まえたダンピールを不必要に半殺しにしたりしてると思う。

最後の方、ソフィに操られているくだりで「どうして私はこんなことをしているんだ」みたいな台詞が追加されていましたが、べつに良心の呵責でそんなこと言ってるんじゃないんだろうなと確信できるあたりなかなかひどい気がする。むしろガーベラ殺せるよ!やったね!って感じなんですけど、まあイニシアチブ取られて操られるのは普通に混乱するし気分よくないでしょうね。ドンマイ。

しかし今のところ、(元)血盟警察のキャラクターがモブか闇堕ちの二択なんですよね。今後の作品でちゃんと潔白な警察官が登場することはありやなしや。ヴァンパイアハンターと役割的にかぶるところがありそうな組織でもありますし、どっかでフォーカスしてほしくはありますね。ダミアンの件が本来隠し玉だったところを見ると何かしらで織り込む予定はあったんじゃないかとは思いますが。気になる。

 

ヘンルーダ(吉野圭吾)

ヘンルーダがもうちょっと頑張ってればわりとなんとかなっただろって話でしたよねマリーゴールドコリウスくんと一緒で他人だからこそ簡単に言えることなんでしょうが、何はともあれさっさと4人で引っ越してればよかったのでは…手に職あるんだし。ヘタレと言わざるを得ない。そもそも責任取れないならセックスするなよって話で。そのへんどういう世界観なのかわかりませんが婚前交渉そもそもセーフなのかとかそういう話にもなってきますよ(難癖)。

アレンの方がその辺だけはまともだよなと思うとガックリきます。アレンのやったことを称賛するつもりは一切ないのですが、彼とは違ってたったひとりの人のために危険を冒したり他のものを捨てたりすることができないのがヘンルーダなんでしょうか。繭期に負けんなよ当時25歳、と思うんですが、むしろ大人なぶん無謀な決断ができなかったのかもしれませんね。前向きでもどうなるかわからない選択をするよりは後ろ向きな現状維持を選んでしまう気持ち自体はわからなくはありません。

しかし自分を保護して遠くまで逃げてくれた養父母に育てられてんだよなコイツ、と思うとやはりヘタレとしか…。お父さんが草葉の陰で泣いてるよ。なんていうか覚悟なかったんですね? 最初に戻りますがだったらセックスするな。アナベルにばかり苦労させてガーベラを閉じ込めてエリカを泣かせて、正直ほぼ擁護できるところはないですね。もう少しがんばりま賞。

でもお歌はすごく好きでした。コリウスくんとのお歌プロレスとか大好き。「花には言葉がある」もかわいくていいし、オメーが悪いんじゃねえかと思いながら観てても「小さな家族」では感動してしまったし…。なんていうかいろいろ思いつつも嫌いになりきれないのは吉野さんパワーなのかも。

 

・その他のキャストさんとかキャラとか

メインキャスト8人+アンサンブルと発表されていたのでそのまま受け取っていたんですが、意外と8人以外も大活躍でしたね。やはり西野さんのクロッカスと藤本さんのポーチュラカが一番目立ってた感じでしょうか。クロッカス編集長のお歌のアドリブというかフェイクというか(なんて言えばいいんだ)がかっこよくて楽しくて好きなんですよね。人としてはアレですが。ポーチュラカちゃんもかわいかった~。「ケリトン出版社」、楽しくていいよね。

他にも役付きのアンサンブルキャストさんいらっしゃいましたが、紫蘭&竜胆がいろんな意味で印象的だったかな。LILIUM組はサプライズだったのもあって驚きましたが、LILIUMからアレンジされたお衣装がかわいかったし、特に鎮西さんがめちゃくちゃ福田さんに寄っててビビりましたね。「お前はもうイニシアチブの虜だ」(ウロ)の言い方好きすぎない? 好き…。あとやっぱりなんかザコくてかわいかった。

特典小説の件、オタクは「双子の吸血種を飼う人間」で妄想して好き勝手に盛り上がっていたというのに蓋を開けたらアレで本当にびっくりですよ。紫蘭と竜胆だけが漢字の名前なのには理由があるとは前々から末満さんおっしゃってましたが、そういうことだったか~っていう。私はしらりんヴァンパイアハンター説を信じてたんですけど違いましたね。あれはあれで面白いと思ってたんだけどなあ。

あとシルベチカがソフィに抗えたのはなぜなんだろうかっていうのがありますね。アナベルなんかを見てると、やっぱり強い意思、もっと言えば愛があれば、という感じっぽいんですけどヤンのことが好きだったんでしょうか。キャメリアとのことを考えると複雑ですね。いかにリコリスが介在しているとは言え、むしろ余計にややこしい話になってるような。この辺はLYCORIS待ちかもですね。

次は繭期夜会ですが、スケジュール的にどうしてもダメなので私個人としては来年の諸々になりますかね。(仮)の取れたCOCOONが有力そうですが、小説TRUMPとかPendulumあたりも読めたりするといいなー。