ひっつきむし(独断と偏見による)

だいたいゲームの感想です

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

 

先日「詭弁・走れメロス」を観に行ったのをきっかけに原作の「新釈走れメロス」に目を通ししたのですが、浅学のため「新釈走れメロス」に収録された短編のパロディ元を山月記走れメロスしか読んだことがなく(教科書に載ってた)、読破をひとまず断念して森見と言えばこれっぽいなという一冊、一緒に買った夜は短し歩けよ乙女を読んでみました。走れメロスともリンクしてると聞いたので。

メロスを観ていても思ったんですが、やっぱり文章がとても好きですね。どうして今まで読もうとしていなかったのかというと、まあ言ってしまえばメジャーなものにあまり興味がないからなんですよね。そりゃ「夜は短し~」とか「有頂天家族」とか「四畳半神話大系」とか、森見さんが売れっ子なのは知っていましたが、だからこそ手が出ずにここまで来たわけです。世間で人気で誰でも知っているようなものを自分が知らないという状態が嫌いで、かと言って素直に触れてみることもできずマイナー(そこまでマイナーでもない中途半端)に逃げるというアレな人間なので…。

話を戻しますと、森見さんの文章っていうのはすごく面白いなと思います。難しげな熟語がポンポン飛び出したり、時に文語調でありつつも軽妙でお洒落で楽しくて、なんというか一言で表すなら芝居がかってるんですよね。だからこそメロスもああいう形での舞台化が合うのか。あんな風に声に出して読みたくなります。

「夜は短し~」は「私」(先輩)とヒロインの「黒髪の乙女」が交互に一人称で語るという形式を取っており、しばしば不思議な出来事に巻き込まれる二人の一年間を描いた恋愛小説。「黒髪の乙女」の非現実的な可愛らしさとちょっと変わった感性もたまりませんし、そんな彼女を「とってもいい子」くらいに受け容れられるフワッとしてユーモラスな人々ばかりの摩訶不思議な作品世界自体が面白く、私としては非常に好みです。

走れメロス」の芽野と芹名が属している詭弁論部、そして芹名と桃色ブリーフ事件も間接的に登場していてニヤニヤしたんですが、「夜は短し~」の登場人物は森見さんの他の作品にも多く登場しているということで、これが沼への誘いなのね、という気分です。そして悪いことに私はそういうタイプの作家さんが大好きです…。リンクしてたりとかスターシステムとか。ということでしばらく森見作品を読み倒す予定です。